このページでは遺産分割協議書の作成の方法等についてご紹介いたします。
亡くなった方が遺言書を作成していなかった場合、相続人が預貯金や不動産登記などの各種の相続手続によって遺産を承継していく際には、遺産分割協議書の提出が求められることが多くあります。
このページの目次
遺産分割協議書とは
亡くなった方が遺言書を作成していなかった場合、すなわち、遺言書がない場合に、相続人が遺産を承継するために、相続人全員による遺産分割協議を行うことがあります。
遺言書がない場合に遺産分割協議を必ず行わなければならないわけではありませんが、不動産の名義は長男、預貯金のうち〇〇万円は二男、〇〇万円は長女、そのほかの財産は長男のように遺産を相続人全員が合意したように分配するためには、遺産分割協議が必要になります。
遺産分割協議は、口約束でも成立しますが預貯金や不動産登記などの各種の相続手続を行う場合は、書面としての遺産分割協議「書」を求められることが一般的です。
そのため、相続人全員の合意によって遺産の分配方法が決まったら、すなわち、遺産分割協議が整ったら、遺産分割協議書を作成することになります。
遺産分割協議の方法
遺産分割協議は、相続人全員が参加して行う必要がありますが、必ずしも一同に会する必要はありません。
相続人が遠方にいる場合は、手紙や電話、インターネット等で連絡を取りながら意見集約をしても構いません。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書の様式は特に法令等によって定められていませんが、「誰が」「何を」相続するのかを明確にするように記載します。
主な記載事項は次の通りです。
- 被相続人(亡くなった人)の本籍・最後の住所・死亡日・氏名
- 相続人全員の合意内容
具体的に「誰が」「何を(どの財産を)」相続するのかを記載します。 - 遺産分割協議の成立年月日
- 相続人全員の住所・氏名・実印での押印
- 遺産分割協議書の作成の流れ
遺産分割協議書を作成するまでの流れは以下のとおです。
1.遺言書を確認する。
遺言書がある場合は、原則的に遺言書の内容にしたがった相続手続を行うことになります。そのため、まずは遺言書の有無を確認します。
2.相続人・相続財産を確認する。
戸籍等を取得し、相続人を確認します。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。遺産分割協議が整った後で新たな相続人が判明した場合、せっかく整った遺産分割協議がやり直しとなってしまうこともあり得ます。
また、遺産分割協議後に新たな相続財産が判明した場合、その相続財産について改めて遺産分割協議をする必要があるほか、新たに判明した相続財産の価額によっては相続税の納付が生じる可能性があります。その場合、せっかく整っていた遺産分割協議のやり直しの可能性もあり得ます。
3.相続人全員により遺産分割協議を行う。
遺産分割協議は相続人全員により行う必要があります。また、相続人の中に未成年者や認知症等により意思表示がしっかり出来ない者がある場合は、家庭裁判所の手続により特別代理人や成年後見人等を選任してもらう必要があります。
4.遺産分割協議の合意内容に基づき遺産分割協議書を作成する。
遺産分割協議の合意内容を明確に記載します。作成した遺産分割協議書には、相続人全員が署名及び実印での押印をします。
財産の記載方法
遺産分割協議書では、「誰が」「何を」相続するのかを明確に記載することが重要ですが、相続財産のうち不動産と預貯金の記載方法をご紹介します。
不動産の記載
不動産は登記簿謄本と同じように記載します。不動産と言えば「住所」を思い浮かべますが、登記簿謄本の記載は必ずしも住所の一致していませんのでご注意ください。
また、登記簿謄本通りに土地と建物は別々に以下の項目を記載します。
建物は「戸建て」とマンションのような「区分建物」では記載事項が異なります。また、区分建物はマンションの底地が「敷地権になっている」ものと「敷地権になっていない」もので記載事項が異なります。
①土地の場合:「所在」・「地番」・「地目」・「地積」
所在 ○○市○○町一丁目
地番 2番3
地目 宅地
地積 ○○○○.○○平方メートル
②建物(区分建物ではない)の場合:「所在」・「家屋番号」・「種類」・「構造」・「床面積」※
※附属建物がある場合は加えて「符号」・「種類」・「構造」・「床面積」を記載します。
所在 ○○市○○町一丁目2番地3
家屋番号 2番3
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 ○○.○○平方メートル
2階 ○○.○○平方メートル
③区分建物(マンションなど)の場合:
1.一棟の建物の表示
「家屋番号」・「建物の名称(建物の番号)※」・「種類」・「構造」・「床面積」
2. 専有部分の建物の表示
「家屋番号」・「建物の名称」・「種類」・「構造」・「床面積」
3. 敷地権の目的たる土地の表示
「土地の符号」・「所在及び地番」・「地目」・「地積」
4. 敷地権の表示
「土地の符号」・「敷地権の種類」・「敷地権の割合」
※一棟の建物の表示の中に「建物の名称(建物の番号)」があるときはその旨記載します。その場合、一棟の建物の表示のうち「種類」「構造」「床面積」の記載は省略できます。
区分建物(底地が敷地権になっている場合・建物の名称があり、種類等の記載を省略)
(一棟の建物の表示)
所在 ○○市〇〇町一丁目2番地3
建物の名称 ○○○○マンション
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 〇〇市〇〇町一丁目2番3の406
建物の名称 406号
種類 居宅
構造 鉄骨造1階建
床面積 4階部分 ○○.○○平方メートル
(敷地権の表示)
土地の符号 1
所在及び地番 ○○市〇〇町一丁目2番3
地目 宅地
地積 ○○○.○○平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 ○○○○○分の○○○
区分建物(底地が敷地権になっていない場合・建物の名称がなく、種類等の省略なし)
底地が敷地権になっていない場合は土地と区分建物を記載します。
土地
所在 ○○市○○町一丁目
地番 2番3
地目 宅地
地積 ○○○○.○○平方メートル
区分建物
(一棟の建物の表示)
所在 ○○市○○町一丁目2番地3
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根11階建
床面積 1階 ○○○.○○平方メートル
2階ないし11階 各○○○.○○平方メートル
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○市○○町一丁目2番3の406
建物の名称 406号
種類 居宅
構造 鉄骨造1階建
床面積 4階部分 ○○.○○平方メートル
預貯金の記載
預貯金を記載する場合は、銀行名・支店・預貯金の種類・口座番号などを記載します。
相続人〇〇は次の遺産を取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇
遺産分割協議書の作成における一般的な疑問点
遺産分割協議書を作成する際に多くの方が「?」と思う点をご紹介します。
1.遺産分割協議書は、パソコンで作成しても良いですか。
遺産分割協議書はパソコンで作成しても構いません。
ただし、氏名欄については、各相続人の意思を明確にし、後日の争いを避けるためにも、
可能な限り各相続人には直筆の署名(サイン)をしてもらうと良いでしょう。
2.遺産分割協議書に、押す印鑑は実印(印鑑登録証明書の印鑑)ですか。
遺産分割協議書には、実印にて押印をします。
実印とは、市町村にて印鑑登録した印鑑のことです。相続人の中に印鑑登録を行っていない方がある場合は、遺産分割協議と並行して印鑑登録の手続を行うようにして下さい。
3.遺産分割協議書は、何通作成する必要がありますか
預貯金や不動産登記の手続で遺産分割協議書を使用する際は、原本を返してもらうことができます。そのため最低1通あれば足ります。
ただし、相続人によっては自分も原本を持っていたいと考える方もいます。そのため、相続人の数分作成して各1通ずつ保管したり、手続の種類分(預貯金、不動産登記、相続税の納付など)作成したり、原本を1通作成し、残りの相続人はコピーを持つこととするなどとしていることが多いと思います。
4.遺産分割協議書を相続人毎に作成することはできますか。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名・押印をする必要がありますが、必ずしも連署の必要はありません。
相続人全員により遺産分割協議は整ったものの、各相続人が遠方にいる場合、1つの書面に相続人全員が署名・押印をする(連署する)となると、その書面を郵便等で回覧しなければならないため非常に時間がかかり面倒です。
そのため、同じ内容の遺産分割協議書を作成し、それに各相続人が個別に署名・押印をする方法でも構いません。例えば相続人が4名の場合、同じ遺産分割協議書を4通作成し、各相続人が署名・押印した書面が4通そろえばよいことになります。
遺産分割協議書の作成について疑問点・不明点などがある場合は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。