各種の相続手続では、相続人であることを証明するために戸籍謄本等の提出を求められることがあります。
ここでは相続手続における戸籍謄本等の収集や相続人の確定の方法についてご案内します。
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戸籍謄本等の収集
相続手続では、相続人として手続をすることになりますが、相続人であることの証明は戸籍謄本等により行います。
戸籍と一口に言っても、戸籍にはいろいろな種類があり、相続の内容により準備する書類が異なります。
例えば、被相続人が遺言書を作成しておらず、相続財産である不動産を遺産分割協議によって相続人が相続する場合に必要な戸籍謄本等は以下の通りです。
被相続人(亡くなった方)に関するもの
- 被相続人の生まれてから亡くなるまでの一生涯の戸籍
- 被相続人の除住民票又は戸籍の附票
相続人に関するもの
- 各相続人の戸籍謄本
- 各相続人の住民票
被相続人に関する戸籍謄本等は一生涯分
被相続人に関する戸籍謄本等は生まれてから亡くなるまでの一生涯分のものが必要です。
ここで戸籍について少しご紹介します。
人が生まれると親からの届出などにより戸籍が作成されます。
戸籍の作成方法は戦前と戦後で大きく異なりますが、生まれた子が最初に記載される戸籍は基本的には親の戸籍です(戦前の場合は祖父や叔父などの場合もあります)。
そして、結婚をした場合、新しく配偶者との戸籍が作られますし、結婚をしなくても自分だけの新しい戸籍を作ることもできます。
また、東京の戸籍を大阪に移す(転籍する)こともできます。
このように、戸籍は一生涯のうちにライフイベントとともに何度も作成されています。加えて、従前の手書きの戸籍からコンピュータ化した戸籍に書き換えられたように、法制度の変更によって新たに作成されることもあります。
ここで重要なポイントは、一生涯のうちにいくつもある各戸籍は、作成されてから次の戸籍が作成されるまでの間の事柄のみ証明しているという点です。
例えば、結婚をして高齢で亡くなった被相続人の戸籍謄本がある場合、その戸籍謄本には被相続人の出生年月日と死亡年月日が記載されていますが、それで被相続人の一生涯の戸籍とは言えません。なぜなら、その戸籍は、少なくとも結婚後の戸籍であるからです。
また、高齢の方であれば、手書きの戸籍からコンピュータ化の戸籍へ書き換えられている可能性が高いので、コンピュータ化後から亡くなるまでの間を証明している戸籍の可能性もあります。
したがって、この場合の一生分の戸籍謄本とは次のようになります。
- 出生時~結婚時
- 結婚時~戸籍のコンピュータ化時
- コンピュータ時~死亡時
さらに、戦前生まれの方の場合、戦後に戸籍の制度が大きく変わったため、戸籍が書き換えられています。また、相続関係によっては、明治・大正時代の戸籍を取得する必要がありますが、時代によって書き換えられているため、その分もすべて取得する必要があります。
当然、転籍や結婚・離婚を繰り返している場合は、その都度、戸籍が作成されますので、その分も必要となります。
このように、被相続人の一生涯分の戸籍謄本の取得は、相続手続の中で最大の難所と言えるほど、相続関係によっては時間も手間もかかる作業となります。
なお、令和6年3月1日より戸籍謄本の取得方法が変わり、本籍地の市町村役場でなくても戸籍謄本等が取得できるようになり、これまでより戸籍収集の手間は軽減されることが想定されています。
しかし、下記でご説明するように取得した戸籍を読み取り、相続人を確定しなければならない点はこれまでと同様です。
戸籍謄本の呼び方
取得できる戸籍にはいくつかの呼び方がありますので、ご紹介します。
① 戸籍謄本=戸籍全部事項証明書
どちらも戸籍の全員分について記載している証明書です。
戸籍謄本とは、戸籍簿が紙で作成されていた際の名称です。
一方、現在、戸籍はコンピュータ化されているので、戸籍全部事項証明書と言います。
ただし、コンピュータ化以降も、これまでの名称である「戸籍謄本」を使用することが多く、本記事でも戸籍謄本と記載しています。
② 戸籍抄本=戸籍個人事項証明書
どちらも戸籍に記載されている一部の人について記載している証明書です。
戸籍謄本と同じく、紙時代とコンピュータ化以降での名称の違いです。
そして、これまでの戸籍抄本の名称が多く使われていることも同様です。
③ 改製原戸籍
戸籍は制度改正により、手書きからコンピュータ化など、いくつか書き換えられています。この場合、書き換えられた戸籍(手書きの戸籍)のことを改製原戸籍(かいせいげんこせき・かいせいはらこせき)といいます。
④ 除籍謄本・除籍抄本
戸籍に記載されている人が死亡や婚姻ですべていなくなってしまった場合、戸籍は除籍簿となります。この除籍簿の証明書を除籍謄本や除籍抄本といいます。
このように戸籍謄本等にはいろいろな種類があります。
そのため、被相続人の一生涯分の戸籍を収集する際は、戸籍謄本・改製原戸籍・除籍謄本などを取得することとなります。
相続人の確定
このように手間をかけて収集する被相続人の戸籍謄本等ですが、これは、公的書類によって相続人を確定するために行っています。
被相続人の一生涯分の戸籍謄本等が取得出来たら、その戸籍謄本等を読み取って、誰が相続人なのかを確定させる必要があります。
この際に、見落としなどをして相続人を間違えてしまうと、仮に遺産分割協議がまとまったとしても、見落とされた相続人を除いて行った遺産分割協議は無効ですので、改めて遺産分割協議をやり直しをする必要があります。
例えば、婚姻前に認知をした子がいて、それを黙って結婚したために、家族が誰も認知をした子のことを知らなかったような場合です。家族としては相続人は当然、家族だけだと思っていたところ、戸籍を調査して初めて判明した相続人の例です。
この認知した子は相続人なので、この子を除いて行った遺産分割協議は無効となります。
このほか、離婚・再婚を繰り返している場合などに、把握していない相続人が存在することがあります。
戸籍の収集・相続人の確定は専門家の利用もご検討ください。
戸籍謄本等の収集は時間も手間もかかります。また、取得した戸籍謄本等を読み取って相続人を確定する作業も、相続関係によっては複雑となります。
相続人を見落としたまま相続手続を進めると、遺産分割協議等をやり直さなければならなくなります。
仮にそうなったとしてもやり直せればいいですが、相続人間の状況によっては、再度の遺産分割協議に応じてもらえないこともあり得ます。
そのため戸籍の収集や相続人の確定は、専門家を利用することも一つの方法です。
例えば、相続財産に不動産が含まれており、相続登記手続を司法書士に依頼する場合、その司法書士は職務上請求といって、相続人に代わって相続登記に必要な戸籍謄本等を取得することができます。
なお、当事務所でも相続登記とともに戸籍の代行取得を行っております。早くそして確実に戸籍の収集及び相続人の確定ができますので、ぜひご利用ください。