このページの目次
単純承認について
相続が生じると相続人は被相続人(亡くなった方)の財産をすべて承継します。
財産の中には預貯金や不動産などのプラスの財産もあれば、借金などのマイナスの財産も含まれます。
例えば、父親が多額の借金を抱えた状態で亡くなった場合、相続人である子はその借金を相続することになり、借金の返済をする必要があります。
もし、借金を相続したくない場合は、相続放棄をする必要があります。
ただし、相続放棄は、最初から相続人ではないこととなる手続なので、それに反するような行為や行動をした場合、すなわち相続人であるような行為をした場合は、相続放棄をすることが出来なくなります。
この相続人であるような行為を単純承認と言います。
単純承認をするには、家庭裁判所への届出など特別な手続は必要はなく、次のような事情があると単純承認をした、すなわち相続人としてすべて財産を相続したことになります。
- 被相続人が死亡したことを知った時から3ヶ月が経過した(熟慮期間の経過)
- 被相続人の財産を使用した
- 被相続人の財産を処分した
- 遺産分割協議をした
- 株主総会で株主として権利行使をした など
上記のような行為をすると単純承認をしたとみなされ、相続財産に借金がある場合は、その借金を相続することになります。
熟慮期間経過後に借金の存在が判明した場合
例えば、父親が亡くなってから3ヶ月が経過した後に債権者から請求書などが届いたような場合です。
この場合、熟慮期間が経過しているのですが、相続人としては父親の財産が全くないと思っており、生前の父親との関係などから相続財産の調査も難しいような事情があった場合は、熟慮期間を見直すような判例もあります。
被相続人が死亡してから3ヶ月を経過した後に借金の存在が判明したような場合で、その対応についてお困りの場合は、司法書士や弁護士などの専門家に早めに相談されることをお勧めします。
相続放棄が出来ない場合
借金を相続した場合であっても、単純承認をしてしまったり、自宅や放棄できない財産があるようなときは、相続放棄ができないこともあります。
そのような借金については、以下のような対応が考えられます。
①借金が時効になっていないか検討する
借金は、長期間(5年間もしくは10年間)放置していると時効になっている可能性があります。
ただし、期間が経過していても自動的に時効が適用されるわけではなく、債権者に対して「借金は時効によって消滅しています」と意思表示をする必要があります。
この意思表示を「時効の援用」と言います。
相続人が知らないような借金を相続した場合は、借金が時効になっていないかを確認してみてください。
なお、長期間放置していた借金であっても、一部でも返済をすると時効の援用が出来なくなってしまいます。
借金を返済する場合は、慎重に行ってください。
②相続財産等で返済する
③任意整理をする
債権者と話し合いの上、今後の返済方法を決める手続です。
債権者はいわばプロですので、任意整理をする場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
④自己破産をする
裁判所の手続によって、借金をゼロにするものです。
自己破産の手続の中で相続したプラス財産や、自分の財産も処分する必要がありますが、それ以上の多額の借金がある場合は、それをゼロにすることができます。
自己破産を検討する場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。