当事務所でサポートした事例をご紹介します。
債権額を供託して抹消した事例
抵当権者が不明であっても、債権の弁済期から20年が経過している場合、遅延損害金を含む債権全額を供託することができれば、所有者だけで抵当権の抹消登記をすることができます。
債権全額なので、仮に債権の一部を返済していた場合も、全額を供託する必要があります。そのため、債権額が100万円とか1,000万円などといった高額な場合は、供託することが困難ですが、休眠担保の中には、明治・大正時代に登記されたままのものも多く、その場合の債権額は10円などと少額のことも少なくありません。
また、そのような場合であっても、貨幣価値を現在価値に引き直すことはないため、80年以上の遅延損害金を加味したとしても、供託額が数百円程度で収まることが多いです。
当事務所では、明治32年に登記され、債権額50円の抵当権の抹消登記手続きを行いました。
抵当権者は個人で住所・氏名が登記されているものの、当事務所で戸籍等を調査しても所在等を確認することができませんでした。
そこで、現在までの遅延損害金等を計算し、遅延損害金を含めた債権額全額を供託することにより、抵当権を抹消することができました。
供託による抵当権抹消登記手続きは、通常の登記手続きのほか、遅延損害金の計算や、供託手続にともなう供託所とのやり取りなどが必要なため司法書士への相談をお勧めします。
裁判の勝訴判決を得て抹消した事例
抵当権者の所在が不明であったとしても債権額が高額で供託による手続きができない場合や、抵当権者に相続が生じており相続人が多数の場合などは、訴訟手続にて抵当権抹消登記手続きを命ずる勝訴判決を得ることにより休眠担保を抹消することができます。
当事務所では、昭和39年に設定された債権額110万円の抵当権及びそれに付随して登記されていた賃借権の仮登記の抹消登記手続きを行いました。
抵当権者の所在は不明であったものの、債権額が110万円であったため供託することは困難でした。そこで、管轄の裁判所に訴訟提起をしました。
管轄の裁判所は、地方裁判所もしくは簡易裁判所となりますが、簡易裁判所であれば簡易裁判所の訴訟代理権を有している司法書士は、弁護士と同様に代理人として訴訟手続きを行うことができます。
当事務所の司法書士は簡易裁判所での訴訟代理権を有しており、管轄が簡易裁判所であったため、訴訟代理人として裁判手続きを行いました。
訴訟手続きを司法書士が行うメリットとしては、訴訟後の登記手続きを熟知しているため、ワンストップでスムーズな手続きが可能な点にあります。特に、判決の内容はとても重要で、仮に裁判で勝訴判決を得たとしても、判決の内容(文言)によっては抹消登記ができないこともあります。
なお、手続きの期間はケースによりますが、半年から1年程度の時間がかかります。
訴訟手続きによる抹消登記は、訴訟手続きと登記手続きの両方を行っていく必要がありますので、司法書士等の専門家に相談されることをお勧めします。
長年放置されていた休眠担保権の抹消登記手続きは、抵当権者の調査、抵当権者の相続人の調査、訴訟手続き、供託手続き、登記手続きなど、さまざまな手続きを同時進行していく必要がある手続きです。
専門的な手続きも多く、個人で行うには困難を伴うことも多いことが想定されます。
まずは、司法書士等の専門家への相談をお勧めします。