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相続登記で提出した戸籍謄本は返却してもらえます
相続登記の準備で苦労して集めた戸籍謄本や印鑑証明書。「法務局に提出したら、もう返ってこないの?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。ご安心ください。結論から申し上げますと、返却してもらえます。
この手続きを「原本還付(げんぽんかんぷ)」と呼びます。
相続の手続きは、不動産の名義変更(相続登記)だけではありません。銀行預金の解約や株式の名義変更など、さまざまな場面で戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書といった同じ書類の提出を求められます。その都度、書類を取得し直していては、時間も費用もかさんでしまいますよね。
そこで、原本還付という手続きが非常に重要になるのです。一度提出した書類の原本を返してもらうことで、他の相続手続きにスムーズに使い回すことができ、費用と手間を大幅に削減できます。
具体的には、登記申請書と一緒に提出した戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書に添付した印鑑証明書などが原本還付の対象です。ただし、原本還付をしてもらうには、いくつかの簡単なルールがあります。この記事では、その具体的なやり方を分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の全体像については、相続登記申請書の書き方(ひな形・記入例)で体系的に解説しています。
【書類別】相続登記の原本還付、具体的なやり方
原本還付のやり方は、実は書類の種類によって少し異なります。特に、集めるのに手間がかかる「戸籍謄本」と、それ以外の「印鑑証明書」などとでは、手続きのポイントが変わってきます。ここでは、書類別に具体的な方法を見ていきましょう。
①大量の戸籍謄本は「相続関係説明図」で返却してもらう
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本は、相続手続きの中でも特に収集が大変な書類の一つです。枚数が多くなると、すべてをコピーするだけでも一苦労ですよね。
そこでおすすめなのが「相続関係説明図」を作成して提出する方法です。これは、亡くなった方(被相続人)と相続人の関係性を一覧にした家系図のようなもので、これを提出すれば、戸籍謄本のコピーを提出する必要がなくなります。
法務局は、提出された戸籍謄本と相続関係説明図の内容が一致しているかを確認した後、戸籍謄本の原本一式をそのまま返却してくれます。
相続関係説明図に決まった書式はありませんが、以下の項目を記載するのが一般的です。
- タイトル:「被相続人〇〇〇〇相続関係説明図」と記載します。
- 被相続人の情報:最後の本籍、最後の住所、登記上の住所、出生日、死亡日などを記載します。
- 相続人の情報:住所、氏名、出生日、続柄(長男、妻など)を記載します。
- 遺産分割協議の内容:誰が不動産を相続するのかを明確にするため、「(不動産取得者)」といった記載を加えます。
相続人を線で結び、関係性が一目でわかるように作成しましょう。自分で集めた戸籍謄本を見ながら作成してください。
②印鑑証明書・遺産分割協議書は「コピー」で返却してもらう
印鑑証明書や遺産分割協議書、住民票など、戸籍謄本以外の書類については、「原本とそのコピーをセットで提出」します。
手続きは、以下のとおりです。
- 書類のコピーを取る:原本還付したい書類(印鑑証明書、遺産分割協議書、住民票など)の全ページを、原寸大(A4サイズなど)でコピーします。
- コピーに一文を書き加える:コピーの余白部分に、「原本と相違ありません」または「これは原本の写しです」と手書きします。
- 署名・押印する:書き加えた一文の横に、登記申請書に押印したのと同じ印鑑で署名・押印します。
- 契印(割印)をする:コピーが複数枚にわたる場合は、ホチキスで綴じ、ページの境目にまたがるように押印(契印)します。
これで原本還付はできます。
どの書類が返却可能?原本還付できる・できない書類一覧
「この書類は返してもらえるの?」と迷わないよう、原本還付ができる書類とできない書類を一覧にまとめました。基本的には、「その登記のためだけに作成された書類」は返却されない、と覚えておくと分かりやすいです。
| 原本還付できる書類 | 原本還付できない書類 |
|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 | 登記申請書 |
| 住民票(除票)・戸籍の附票 | 相続関係説明図(コピーの代わりのため) |
| 遺産分割協議書 | 委任状(司法書士に依頼した場合) |
| 遺産分割協議書に添付した印鑑証明書 | |
| 固定資産評価証明書 | |
| 遺言書(公正証書遺言、自筆証書遺言) |
登記申請書や相続関係説明図は、法務局が登記の記録として保管するために提出するものなので、返却されません。一方で、戸籍謄本や印鑑証明書などは、他の手続きでも必要となる公的な証明書であるため、原本還付が認められています。
「法定相続情報一覧図」も便利
ここまでは「相続関係説明図」を使った方法を解説してきましたが、似たような書類として「法定相続情報一覧図」という制度がありますので、ご紹介いたします。
これは、法務局に戸籍一式を提出して申し出ることで、登記官が内容を確認し、認証文を付けて交付してくれる公的な証明書です。一度この「法定相続情報一覧図の写し」を取得すれば、その後の相続手続き(相続登記、銀行預金の解約など)では、大量の戸籍謄本の束を提出する必要がなくなります。
では、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」はどちらを選べば良いのでしょうか。それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 相続関係説明図 | 法定相続情報一覧図 | |
|---|---|---|
| 目的 | 相続登記の際に、戸籍謄本の原本還付を受けるため | 各種の相続手続きで、戸籍謄本の束の代わりとして利用するため |
| 公的な証明力 | なし(私的な書類) | あり(法務局のお墨付き) |
| 利用範囲 | 相続登記(原本還付のために法務局へ提出する書面として利用) | 相続登記、銀行、証券会社、年金手続きなど広範囲 |
| 作成・申出先 | 自分で作成 | 法務局に申出 |
どちらを選ぶべきか、判断のポイントは「相続手続きをする先の数」です。
- 手続き先が不動産登記だけなど少数 → 「相続関係説明図」で十分
- 銀行や証券会社など手続き先が多い → 「法定相続情報一覧図」が便利
法定相続情報一覧図の写しは無料で必要通数の交付を受けられます。また、法務局での保管期間(5年間)中は再交付も受けられます。手続き先が多い場合は、こちらの制度の利用を検討する価値は非常に高いでしょう。ちなみに、2024年3月から始まった戸籍の広域交付制度を利用すれば、戸籍集めも以前より楽になっています。
相続登記の原本還付に関するよくある質問(Q&A)
最後に、原本還付の手続きに関して、多くの方が疑問に思われる点をQ&A形式でまとめました。
Q1. 還付された原本は、いつ・どのように受け取れますか?
A. 原本が返却されるのは、登記が完了した後です。申請してすぐにその場で返してもらえるわけではありません。登記が完了してから原本が返却されます。処理期間は法務局の混雑状況や申請内容によって変動するため、各法務局が公表している「登記完了予定日」で目安を確認すると安心です。最近は法務局が混雑しており、登記完了までに時間がかかるケースも増えています。
受け取り方法は、以下の2つです。
- 法務局の窓口で受け取る:登記完了後に法務局へ行き、申請書に押した印鑑を持参して受け取ります。
- 郵送で受け取る:登記申請時に、宛名を書いて切手を貼った返信用封筒(レターパックなどが確実です)を一緒に提出しておくと、登記完了後に郵送で返却してもらえます。
Q2. 原本還付の手続きを忘れて申請してしまいました…
A. 残念ながら、原則として後から原本還付を請求することはできません。原本還付の請求は、必ず登記申請と同時に行う必要があります。もし忘れてしまった場合は、他の手続きで必要になった際に、市役所などで戸籍謄本や印鑑証明書を再度取得し直すほかありません。申請前のチェックが非常に重要です。
Q3. 自分で手続きするのは難しそうです…
A. 「書類が多くて管理が大変そう」「相続関係が複雑で、説明図を自分で作れるか自信がない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、無理せず相談するのも一つの有効な手段です。
司法書士にご依頼いただければ、戸籍の収集や相続関係説明図の作成、今回解説した原本還付の手続きも含めサポートすることができます。特に、相続人が多かったり、代襲相続や数次相続が発生していたりする複雑なケースでは、そのメリットをより大きく感じていただけるはずです。
まとめ|習志野市・八千代市での相続登記はご相談ください
この記事では、相続登記で提出した戸籍謄本などの書類を返却してもらう「原本還付」のやり方について解説しました。
【この記事のポイント】
- 相続登記で提出した書類は「原本還付」で返却してもらえる。
- 大量の戸籍謄本は「相続関係説明図」を提出すれば、コピー不要で返却される。
- 印鑑証明書などは「原本とコピーをセット」で提出し、コピーに所定の記載と押印をする。
- 手続き先が多い場合は、戸籍の束の代わりになる「法定相続情報一覧図」が便利。
原本還付は、その後の相続手続きを効率的に進めるために欠かせない、とても大切な手続きです。この記事を参考に、漏れなく準備を進めていただければ幸いです。
もし、「自分で手続きするのはやはり不安だ」「仕事が忙しくて時間が取れない」などでお困りの場合は、一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。
習志野市、八千代市の方で、相続登記や登記申請書の作成についてのお問い合わせは、司法書士和久咲法務事務所が対応させていただきます。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
