遺産分割協議とは?いつ・誰が・何を決める手続きか

遺産分割協議とは?相続でまず理解すべき3つの基本

ご家族が亡くなられ、悲しみに暮れる間もなく始まってしまうのが相続の手続きです。多くの方が初めての経験で、「何から手をつければいいのか…」と戸惑われることでしょう。特に「遺産分割協議」という言葉を耳にしても、具体的に何をするのか、よく分からないという方も少なくありません。

遺産分割協議とは、一言でいえば「亡くなられた方(被相続人)の遺産を、相続人全員でどのように分けるかを話し合うこと」です。この話し合いは、相続における重要なステップの一つと言えるでしょう。

多くの方が「そもそも遺産分割協議って何?」と感じているかと思います。そこで、まず押さえていただきたい基本が次の3つです。

  • いつ行うのか:ご家族(被相続人)が亡くなられた後に行います。
  • 誰が行うのか:相続人全員で行う必要があります。
  • 何を決めるのか:亡くなった方の財産を誰がどのように引き継ぐかを決めます。

この3つの基本を理解するだけでも、相続手続きの全体像が少し見えてくるはずです。ここから、それぞれのポイントをもう少し詳しく見ていきましょう。

相続手続きの全体像については、相続手続きの大まかな流れで体系的に解説しています。

いつから始める?協議に期限はあるのか

「遺産分割協議はいつまでに終えなければならないのですか?」というご質問をよく受けます。実は、遺産分割協議そのものには、法律で定められた明確な期限はありません。「いつでも良い」と言われれば少し安心するかもしれませんが、手続きや内容によっては期限に注意しなければならないものもあります。

例えば、相続税の申告・納付には「相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月目の日まで」という期限が設けられています。

遺産分割協議がこの期限までにまとまっていないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった、相続税の負担を大きく軽減できる特例が利用できなくなってしまう可能性があります。相続税の具体的な内容については、税理士に確認していただく必要がありますが、10か月以内に遺産分割協議をまとめる必要性が高い手続きとしてご理解いただくとよいと思います。

その他の例では、遺産分割協議の中で特別受益や寄与分が主張できるのは相続開始から10年以内と定められています(令和5年4月1日の法改正)。

また、相続登記は、基本的に相続があったことを知った時から3年以内に行う必要があるので、不動産に関する遺産分割協議は3年以内が一つの目安になるかと思います。

誰が参加する?相続人全員の参加が絶対条件

遺産分割協議を進める上で、最も重要といえるルールがあります。それは、「相続人全員で参加し、全員が合意すること」です。

たとえ相続人のうちの一人でも欠けた状態で話し合いを進め、合意したとしても、その遺産分割協議は法的に無効となってしまいます。後から参加していなかった相続人が現れ、協議のやり直しを求められるといった大きなトラブルに発展しかねません。

中には、長年連絡が取れず行方不明の相続人がいたり、認知症で判断能力が不十分な相続人がいたりするケースもあるでしょう。このような場合、家庭裁判所で「不在者財産管理人」や「成年後見人」を選任するといった法的な手続きが必要になります。また、相続人に未成年者がいる場合は、親が代理人になれず「特別代理人」の選任が必要な場合もあります。相続人に認知症の方がいる場合など、ご自身で判断せず、手続きを進めることが重要です。

何を話し合う?遺産の分け方を決める

相続人全員が揃ったら、いよいよ本題です。遺産分割協議では、具体的に「誰が、どの財産を、どれくらいの割合で取得するのか」を話し合って決めていきます。

法律で定められた「法定相続分」という目安はありますが、必ずしもその通りに分ける必要はありません。相続人全員が納得すれば、自由に分け方を決めることができます。

主な分け方には、以下のような方法があります。

  • 現物分割:「土地と建物は長男が、預貯金は次男が」というように、財産をそのままの形で分ける方法です。
  • 代償分割:特定の相続人(例:長男)が不動産など分けにくい財産をすべて相続する代わりに、他の相続人(例:次男)に対して不足分を現金で支払う(代償金を支払う)方法です。
  • 換価分割:不動産などを売却して現金に換え、その現金を相続人間で分ける方法です。公平に分けやすいのが特徴です。
  • 共有分割:一つの不動産を、複数の相続人の共有名義にする方法です。将来的に売却や管理で意見が対立する可能性があり、慎重な判断が求められます。

どの方法が最適かは、遺産の内容や相続人の状況によって異なります。それぞれの希望を尊重し、冷静に話し合うことが円満な解決への第一歩です。

遺産分割協議の進め方|準備から完了までの5ステップ

遺産分割協議の全体像が見えてきたところで、次に「具体的にどう進めればいいの?」という疑問にお答えします。手続きは大きく分けて5つのステップで進んでいきます。この流れを把握しておけば、次に何をすべきかが明確になり、落ち着いて対応できるはずです。

遺産分割協議の進め方を示す5つのステップの図解。遺言書の確認、相続人と財産の調査、話し合い、協議書作成、名義変更の流れがアイコンと共に示されている。

ステップ1:遺言書の有無を確認する

相続手続きを開始するにあたり、何よりもまず確認すべきは「遺言書の有無」です。法的に有効な遺言書が残されている場合、原則としてその内容に従って遺産が分けられるため、遺産分割協議は不要です。

遺言書は、故人の自宅(仏壇や金庫など)や、重要書類として保管されていることも多いです。また、公証役場で「公正証書遺言」として作成されている場合や、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している可能性もあります。それらの場合は、公証役場や法務局で検索をすることができます。まずは心当たりのある場所を探してみましょう。もし遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になるケース(自筆証書遺言書保管制度を利用してない自筆証書遺言)もあります。

ステップ2:相続人と相続財産を調査・確定する

遺言書がない場合は、遺産分割協議の準備に入ります。協議の土台となるのが、「誰が相続人なのか(相続人の確定)」と「何を分けるのか(相続財産の確定)」です。

相続人の調査は、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取り寄せて行います。これにより、ご家族も知らなかった相続人(例えば、前妻の子など)が判明することもあります。

相続財産の調査では、預貯金、不動産、有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産もすべて洗い出します。この調査が不十分だと、後から新たな財産が見つかり、協議をやり直すことにもなりかねません。正確な財産目録を作成することが、後のトラブルを防ぐ鍵となります。

ステップ3:相続人全員で話し合う

相続人と財産がすべて確定したら、いよいよ相続人全員での話し合いです。「全員で」というと、一堂に会するイメージがあるかもしれませんが、必ずしも一堂に会する必要はありません。遠方に住んでいる、仕事の都合が合わないといった場合は、電話や手紙、メール、オンライン会議などを活用して協議を進めることも可能です。

大切なのは、全員が協議の内容を理解し、合意に参加することです。この段階では、それぞれの想いや生活状況の違いから、感情的な対立が生まれやすくなります。お互いの立場を尊重し、冷静に話し合うことを心がけましょう。

ステップ4:遺産分割協議書を作成する

話し合いがまとまったら、その合意内容を「遺産分割協議書」という書面にします。口約束だけでは、後になって「言った、言わない」のトラブルになる可能性がありますし、不動産の登記や預貯金の解約といった手続きの際に、金融機関や法務局から提出を求められるため、この書類の作成は原則として必須です。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印(市区町村に印鑑登録をしている印鑑のこと)で押印します。この書類が、相続手続きを進める上での法的な証明書となります。具体的な作成方法については、遺産分割協議書の作成に関する記事で詳しく解説しています。

ステップ5:協議書に基づき名義変更などの手続きを行う

遺産分割協議書を作成したら、それで終わりではありません。最後に、その協議書の内容に従って、各財産の名義変更手続きを行います。

  • 不動産:法務局で所有権移転登記(相続登記)
  • 預貯金:金融機関で解約または名義変更
  • 株式:証券会社で名義変更
  • 自動車:運輸支局で移転登録

これらの手続きをすべて終えて、ようやく遺産分割は完了となります。特に不動産の相続登記は2024年4月から義務化されており、注意が必要です。

遺産分割調停の様子を描いたイラスト。調停委員が相続人の間に入り、話し合いを仲介している。

遺産分割協議がまとまらない…そんな時の2つの解決策

相続人同士で話し合いを重ねても、どうしても意見がまとまらない。残念ながら、そうしたケースもあり得ます。感情的なしこりが残ったり、お互いの主張が平行線をたどったり…。当事者だけでの解決が難しいと感じたら、法的な手続きに移行することも選択肢の一つです。

相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での手続きが必要になります。主な解決策は「遺産分割調停」と「遺産分割審判」の2つです。

解決策1:家庭裁判所での「遺産分割調停」

まず検討するのが「遺産分割調停」です。これは、家庭裁判所で行う「話し合い」の手続きです。

調停では、裁判官と、民間の有識者から選ばれた「調停委員」が中立的な立場で間に入り、各相続人の主張や事情を丁寧に聞き取ってくれます。そして、解決に向けて助言をしたり、解決案を提示したりして、合意形成のサポートをしてくれます。

当事者同士が直接顔を合わせずに、調停委員を介して意見を伝え合うこともできるため、感情的な対立が激しい場合でも冷静に話し合いを進めやすいというメリットがあります。あくまで話し合いによる円満な解決を目指す手続きです。

参照:遺産分割調停のしおり(裁判所)

解決策2:裁判官が判断を下す「遺産分割審判」

調停でも話し合いがまとまらず、不成立に終わってしまった場合、手続きは自動的に「遺産分割審判」へと移行します。

審判は、もはや「話し合い」ではありません。裁判官(家事審判官)が、各相続人の主張や提出された資料、これまでの経緯など、一切の事情を考慮した上で、法律に基づいて「このように遺産を分けるべき」という最終的な判断(審判)を下す手続きです。

審判で下された決定には法的な強制力があり、相続人はその内容に従わなければなりません。この段階では、自分の希望を伝えるだけでなく、法的に説得力のある主張と、それを裏付ける証拠の提出が極めて重要になります。

遺産分割協議書を作成する際の3つの重要注意点

無事に協議がまとまり、いざ遺産分割協議書を作成する段階。ここで気を抜いてはいけません。書類に不備があると、せっかくの合意が無駄になり、法務局や金融機関での手続きがストップしてしまう恐れがあります。重要なポイントを3つご紹介します。

相続人たちが遺産分割協議書に実印で押印しているイラスト。手続きの重要性が伝わるシーン。

注意点1:財産は正確に、特定できるように記載する

遺産分割協議書に記載する財産は、「誰が見ても、どの財産のことか一つに特定できる」レベルで正確に書く必要があります。

  • 不動産の場合:普段使っている住所(住居表示)ではなく、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている通りに、「所在」「地番」「地目」「地積」、「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」などを正確に転記します。固定資産税の納税通知書の記載だけでは不十分な場合が多く、注意が必要です。
  • 預貯金の場合:「〇〇銀行の預金」といった曖昧な書き方ではNGです。「〇〇銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567」のように、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を可能な限り正確に記載したほうが無難です。

注意点2:相続人全員が署名し「実印」で押印する

遺産分割協議書の末尾には、相続人全員が合意した証として、各自が署名し、「実印」で押印します。
実印とは、市区町村に登録した印鑑のことで、印鑑登録証明書に示されている印影の印鑑のことです。手続先や手続内容によって求められる印鑑・書類は異なりますが、遺産分割協議書を用いる手続では、実印での押印や印鑑登録証明書の提出を求められることが一般的です。

そして、押印した印鑑が本物の実印であることを証明するために、全員分の「印鑑登録証明書」を添付する必要があります。これは、本人が自分の意思で合意したことを公的に証明するための、非常に重要なプロセスです。遺産分割協議書への署名押印は、書類の法的効力を担保する要となります。

注意点3:後から見つかった財産の扱いを決めておく

どんなに念入りに財産調査を行っても、後から故人の通帳や、誰も知らなかった株式などが見つかるケースは意外と少なくありません。そうした場合に備え、遺産分割協議書に次のような一文を加えておくことをお勧めします。

もし、新たに見つかった財産について、改めて相続人全員で別途協議したいのであれば、
「本協議書に記載のない遺産が後日発見された場合は、その分割について相続人全員で別途協議する。」

一方、新たに見つかった財産については、相続人の一人(例えば長男)に相続させるということにしたい場合は、
「本協議書に記載のない遺産が後日発見された場合は、その遺産は〇〇(長男の氏名)が相続する。」

なお「別途協議をする」とした場合、再度の遺産分割協議となるため、その時点で認知症等で遺産分割ができない人がいた場合は、スムーズに遺産分割協議及びその後の手続きができない可能性があります。一方で、「〇〇が相続する」とした場合は、別途遺産分割協議をすることなく、「〇〇」(例えば長男)が相続することができます。
どのような文例を選択するかは、相続人間の関係性や財産状況によりますが、新たな財産が見つかるたびに協議をやり直し、再び書類を作成する手間を省き、将来の紛争を未然に防ぐことができます。

遺産分割協議に関するよくあるご質問

最後に、遺産分割協議に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 借金などのマイナスの財産はどうなりますか?

A. 借金の扱いについて遺産分割協議書に記載することはできますが、債権者の同意がない限り、原則として法定相続分に応じて各相続人が引き継ぐことになります。
例えば、「長男がすべての借金を引き継ぐ」と遺産分割協議に記載することはできますが、それはあくまでも相続人間の内部的な取り決めを記載したに過ぎません。
貸主(債権者)は、他の相続人に対して法定相続分の割合で返済を求めることができます。
もし債権者に対しても遺産分割協議の内容に沿った対応をお願いしたい場合は、債権者自身の同意を得る必要があります。
なお、借金が多い場合は、財産も借金も一切引き継がない相続放棄という手続きも検討する必要があります。

Q. 専門家に相談するタイミングはいつが良いですか?

A. 「少しでも不安を感じた時」が最適なタイミングです。
具体的には、以下のような状況が考えられます。

  • 相続人間の関係が良くなく、揉めそうだと感じた時
  • 相続財産の種類が多く、調査や評価が複雑な時
  • 相続人の中に連絡が取れない人や、判断能力が不十分な人がいる時
  • 平日は仕事で忙しく、手続きを進める時間がない時

問題が複雑化・深刻化する前に相談することで、時間的・精神的な負担を大きく減らし、スムーズな解決につながる可能性が高まります。遺産分割協議は、相続手続きの中でも特に専門的な知識と経験が求められる場面です。少しでもご不安があれば、お気軽にご相談ください。

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