遺産分割協議は複数回できる?不動産売却や費用も解説

遺産分割協議は複数回に分けても問題ありません

ご相続が発生し、遺産をどう分けるか話し合う「遺産分割協議」。多くの方が「一度の話し合いで、すべての財産について決めなければならない」と思われているかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。結論からお伝えすると、遺産分割協議は複数回に分けて行うことが可能です。

遺産分割協議は1回ですべての事柄を決める必要があると思われていることが多いですが、財産が多い場合や、話し合いがまとまらない場合など、遺産分割を複数回に分けて行うこともあり、有効です。例えば、相続税の納税資金の確保や、他の相続人への代償金の確保を目的として、相続財産の一部である不動産を売却するため、その不動産のみの遺産分割協議をすることがあります。

このように、一度にすべての財産について合意するのが難しい場合、合意できた財産から順に分割協議を進めていくことは、むしろ現実的で有効な方法といえます。

「一度で全部決めないと…」というプレッシャーを感じる必要はありません。まずは状況を整理し、段階的に進めていく選択肢があることを知っていただくだけでも、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。遺産分割協議の手続きの全体像については、遺産分割協議の手続きの全体像で体系的に解説しています。

「複数回に分ける」と「やり直し」は全く違います

遺産分割協議について調べていると、「複数回に分ける」話と「やり直す」話が混同されがちですが、この二つは法的に全く異なる手続きです。この違いを理解することが、思わぬトラブルや税金の負担を避けるための重要な第一歩となります。

両者の違いを、下の表で比べてみましょう。

遺産分割協議の「一部分割」と「やり直し」の違いを比較した図解。一部分割は計画的な手続きで税務リスクが低いのに対し、やり直しは贈与税などのリスクがあることを示している。
項目複数回に分ける(一部分割)やり直し(再協議)
目的未分割の財産について、新たに協議する一度確定した分割内容を、合意の上で覆す
タイミング最初の協議で一部財産のみ合意した後すべての財産について協議が完了した後
法的効力各協議がそれぞれ有効に成立する最初の協議を合意解除し、新たな協議を成立させる
税務上の主なリスク特になし(通常の相続税の範囲)贈与税や不動産取得税などが課される可能性
「一部分割」と「やり直し(再協議)」の比較

複数回に分ける「一部分割」とは

一部分割とは、その名の通り、遺産の一部についてのみ先行して分割協議を成立させる方法です。すべての財産について一度に合意するのが難しい場合に、合意が整った財産から順に手続きを進めていきます。

一部分割のメリットは、主に以下の点が挙げられます。

  • 納税資金などを早期に確保できる:不動産などを先に売却し、相続税の支払いに充てることができます。
  • 手続きを円滑に進められる:意見がまとまりやすい財産から分割を進めることで、膠着状態を避けられます。
  • 心理的な負担が軽くなる:一度にすべてを決めなければならないというプレッシャーから解放されます。

一方で、全体のバランスが見えにくくなったり、複数回にわたって協議書を作成・管理する手間がかかったりする点はデメリットといえるかもしれません。しかし、計画的に進めることで、複雑な相続をスムーズに進めるための有効な手段となります。

合意を覆す「やり直し(再協議)」とは

一度成立した遺産分割協議は、法的に有効な契約と同じですので、原則として一方的にやり直すことはできません。しかし、相続人全員が「今の合意内容を白紙に戻して、もう一度協議し直しましょう」と合意すれば、例外的にやり直し(再協議)ができるとされています。

ただし、この「やり直し」には大きな落とし穴があります。それは税金の問題です。

法的には「全員の合意による契約の解除」ですが、税務上は「一度目の協議で取得した財産を、他の相続人に贈与したもの」とみなされる可能性があります。その結果、本来払う必要のなかった贈与税が課されてしまうリスクがあるのです。

また、不動産の名義変更(相続登記)を終えた後にやり直しをすると、再度名義を戻すための登記費用や、不動産取得税まで課されることもあります。安易なやり直しは、金銭的に大きな負担増につながる危険性をはらんでいるため、最後の手段と考えるべきでしょう。そのためにも、最初の遺産分割協議書の作成が非常に重要になります。

不動産だけ先に売却?一部分割の具体的な進め方

「相続税の支払いが迫っている」「誰も住む予定のない実家を早く現金化したい」といった理由で、不動産だけを先に分割したいというようなご要望があります。ここでは、一部分割を活用して不動産を先行して売却するための具体的な流れと注意点を解説します。

不動産を先行して売却するための一部分割の4ステップを示したフローチャート。相続人全員の合意、一部分割協議書の作成、相続登記、不動産売却という流れを解説している。

なぜ不動産だけ先に分割するのか?主な目的

不動産について一部分割を行う目的は、主に次の3つが考えられます。ご自身の状況がどれに当てはまるか確認してみましょう。

  • 相続税の納税資金の確保:相続税は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に金銭で一括納付します(要件を満たす場合は延納・物納が認められることもあります)。手元の現金が不足している場合、不動産を売却して納税資金に充てるケースがあります。
  • 他の相続人への代償金の支払い:特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人へ現金を支払う「代償分割」を行う際、その支払資金を確保するために別の不動産を売却することがあります。
  • 利用予定のない不動産の早期現金化:空き家のまま放置すると、固定資産税がかかり続けるだけでなく、管理の手間や資産価値の低下といった問題も生じます。早期に売却して、管理の負担をなくし、相続人全員で現金を分け合う(換価分割)ことができます。

注意点:相続人全員の合意が絶対条件です

一部分割、特に不動産の売却を進める上で、最も重要で、かつ絶対的な条件は「相続人全員の合意」です。相続財産は、遺産分割協議が完了するまで相続人全員の共有財産となります。そのため、一人でも不動産の売却に反対する人がいれば、法的に売却手続きを進めることはできません。

「たぶん大丈夫だろう」といった口約束で進めるのは大変危険です。後から「そんな話は聞いていない」というトラブルに発展しないよう、誰が、どの財産を、どのように分割するのかを書面、つまり「遺産分割協議書」として明確に残しておくことが不可欠です。なお、相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合は、成年後見制度の利用を検討する必要があります。

一部分割のための遺産分割協議書の作り方

不動産を先行して売却する場合、その不動産を一旦相続人のうちの一人(または複数人)の名義に変更(相続登記)する必要があります。その際に法務局へ提出するのが遺産分割協議書です。

一部分割のための遺産分割協議書には、通常の協議書に加えて、特に重要な2つのポイントがあります。

  1. 今回分割する財産を限定する旨を明記する
    「今回は下記の不動産についてのみ分割協議を行う」というように、協議の対象が遺産の一部であることを明確にします。これにより、他の財産については協議が未了であることが誰の目にも明らかになります。
    不動産の情報を正確に記載しないと、登記手続きが滞る原因にもなりますので、登記事項証明書(登記簿謄本)通りに記載することが大切です。
  2. 残りの財産について別途協議する旨を記載する
    「その他の財産については、後日改めて遺産分割協議を行う」といった一文(残余財産条項)を必ず入れましょう。この一文がないと、後になって「今回の協議で全て完了したはずだ」といった主張が出てくるリスクを防ぐことができます。

法務局が公開している記載例も参考になりますが、個別の事情に合わせて作成することが重要です。

参考:法務局|相続(遺産分割のとき)記載例

複雑な遺産分割は専門家へ相談を

ここまでご覧いただいたように、遺産分割協議は複数回に分けて計画的に進めることが可能です。特に不動産の売却が絡む場合や、相続人の間で意見がまとまりにくい場合は、一部分割が有効な解決策となることもあります。

しかし、その手続きは法的な知識や税務上の注意点を伴い、ご自身だけで進めるのは簡単なことではありません。特に、一部分割のための遺産分割協議書の作成には、将来のトラブルを防ぐための専門的なノウハウが必要です。

安全かつ円滑に手続きを進めるためには、相続を専門とする司法書士などにご相談いただくことをお勧めします。ご相談いただくことで、手続の全体像の整理や必要書類の準備・作成などを通じて、相続手続きを進めるためのサポートを受けられるようになると思います。

習志野市・八千代市でのご相談はこちら

習志野市、八千代市およびその近隣にお住まいの方で、遺産分割協議がなかなかまとまらない、不動産の売却を伴う相続でどう進めたらよいか分からない、といったお悩みをお持ちでしたら、一度、司法書士和久咲法務事務所へご相談ください。

皆様のお話を丁寧にお伺いし、ご状況に合わせた最適な進め方をご提案いたします。相続に関する心労を少しでも軽くできるよう、全力でサポートさせていただきます。

司法書士和久咲法務事務所へのお問い合わせ

keyboard_arrow_up

0474705001 問い合わせバナー 無料相談について