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「これで完璧」のはずが…その遺産分割協議書では相続登記できません
ご家族が亡くなられ、相続人みなさんで話し合い、ようやく遺産分割協議書が完成。全員から署名と実印をもらい、あとは法務局に相続登記を申請するだけ…。「これで完璧だ」と、ほっと一息ついているかもしれませんね。
しかし、もしその遺産分割協議書に、不動産の記載ミスが一つでもあったとしたら…?せっかくの努力が水の泡となり、相続登記の申請は補正(修正)を求められ、補正できない場合には却下となることもあります。
「まさか、そんな間違いなんてしないよ」と思われるかもしれません。ですが、多くの方が良かれと思って参考にする固定資産税の納税通知書(課税明細書)の記載をそのまま書き写してしまい、失敗するケースがとても多い印象です。
相続人全員にもう一度頭を下げて実印をもらい直す…考えただけでも気が重いですよね。この記事では、そんな悲劇を避けるため、相続登記でつまずきがちな不動産記載の落とし穴と、その具体的な対策について、千葉県で相続手続きを専門に扱う司法書士が分かりやすく解説します。
相続登記でつまずく不動産記載の3つの落とし穴
法務局は、遺産分割協議書に書かれた不動産の情報と、登記記録の情報を厳密に照合します。少しでも内容が異れば、「どの不動産について協議したのか特定できない」と判断され、手続きはストップしてしまう可能性があります。特に注意が必要な3つの典型的なミスをご紹介します。

【落とし穴1】不動産の表示が登記事項証明書と違う
最も多く、そして基本的な間違いが、不動産の「表示」の不一致です。市区町村が管理する固定資産税の情報と、法務局が管理する登記の情報は、必ずしも一致しません。
例えば、普段使っている「住所(住居表示)」と、登記上の「所在・地番」は全くの別物です。遺産分割協議書には、相続登記の基礎となる登記事項証明書(登記簿謄本)に書かれている情報を、一字一句正確に転記しなければなりません。
【参照情報】
登記事項証明書は、法務局の窓口のほか、オンラインでも請求できます。手続きの第一歩として、必ず最新のものを取得しましょう。
登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です(法務局)
【落とし穴2】私道や公衆用道路の持分が漏れている
ご自宅の前の道路が「私道」の場合、その土地の持分(権利)も相続財産です。しかし、この私道持分は、固定資産税が非課税になっていることが多く、納税通知書(課税明細書)には記載されないことがあり、特に固定資産税が非課税(評価額0円等)となっている場合は見落としやすい点に注意が必要です。
「道路の持分くらい、なくても困らないのでは?」と思うかもしれませんが、大間違いです。将来、その不動産を売却したり、家を建て替えたりする際に、私道持分の名義が亡くなった方のままだと、買主への所有権移転手続や、金融機関の住宅ローン審査等で支障が生じるおそれがあります。
後から慌てて私道持分だけ協議をやり直すのは、大変な手間と時間がかかります。必ず事前に確認しましょう。
【落とし穴3】マンションの「敷地権」の記載がない
マンションを相続する場合も、戸建てとは異なる注意点があります。遺産分割協議書には、お部屋の部分(専有部分)だけでなく、その部屋が持っている土地の権利(敷地権)についても正確に記載する必要があります。
登記事項証明書を取得すると、戸建てとは異なり、「一棟の建物の表示」や「敷地権の目的たる土地の表示」、「敷地権の表示」といった項目があります。これらに不足や誤りがあると、法務局から補正(修正)を求められることがあり、補正できない場合には申請が却下となることもあります。特に「敷地権の割合」は忘れがちなので、注意深く確認してください。

万一の記載漏れを防ぐ「お守り」とは?
ここまで読んで、「自分で完璧に財産を調べるのは難しい…」と不安に思われたかもしれません。そんな不安を少しでも和らげ、万一の記載漏れに備えるための、いわば「お守り」のような一文があります。
それは、遺産分割協議書の末尾に、次のような「予備的条項」を加えておくことです。
【記載例】
本遺産分割協議書に記載のない遺産、および後日発見された遺産については、相続人〇〇 〇〇がこれを全て取得する。
この条項を入れておくことで、後から私道持分などの財産が見つかった場合でも、指定された相続人が取得する前提で整理しやすくなることがあります。そのため、状況によっては、改めて相続人全員で協議書を作り直して実印をもらい直す手間を軽減できる場合があります。
もちろん、これはあくまで万一に備えるためのものですし、遺産分割協議書の内容によっては、不適切な場合もありますので、最初から正確な財産調査を行い、全ての財産を記載することが、円満な相続の基本であることは言うまでもありません。
すでにミスが発覚…どうすれば修正できる?
もし、すでに作成済みの遺産分割協議書にミスを見つけてしまった場合、どうすればよいのでしょうか。対応はミスの内容によって異なります。
- 軽微な誤字・脱字の場合
単なる漢字の間違いなど、誰が読んでも意味が通じるような軽微なミスの場合は、間違った箇所に二重線を引き、その近くに正しい文字を記入した上で、相続人「全員」が「実印」で訂正印を押すことで修正できたり、「捨印」がある場合は、それを使用することができる場合があります。 - 不動産の表示間違いや財産の記載漏れの場合
訂正印や捨印での対応は難しいと思われます。後日、「どの不動産について協議したかわからない」などとして、相続人間で争いになりかねません。そのため、この場合は、原則として遺産分割協議書を正しい内容で作り直すほうが無難だといえます。
作り直しとなると、相続人全員に事情を説明し、再度署名と実印をもらう必要があります。一度は納得して印鑑を押してくれた相続人にお願いし直すのは、心理的にも大きな負担となります。だからこそ、最初の段階で記載漏れのない書類を作成することが何よりも大切なのです。
千葉県で相続登記にお困りならご相談ください
遺産分割協議書の作成は、一見すると単純な作業に見えるかもしれません。しかし、特に不動産が含まれる場合、今回ご紹介したような落とし穴がいくつも潜んでいます。
ささいな記載ミスが、相続人全員を巻き込む大きな手戻りを生み、時間も労力も、そして精神的にも大きな負担となってしまいます。より確実に、そしてスムーズに手続きを進めたいと考えるなら、作成段階から専門家のサポートを受けるのも有効です。
司法書士和久咲法務事務所は、千葉県習志野市・八千代市を中心に、相続手続きを継続的にお手伝いしてきました。ご相談から手続き完了まで、代表である私が直接ご対応し、皆様の不安に寄り添いながら、最適な解決策をご提案します。
「協議書の作成方法がわからない…」など、どんな些細なことでも構いません。もしお困りでしたら、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。あなたの心の重荷を少しでも軽くするお手伝いができれば幸いです。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
