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相続で混乱しやすい「遺留分・特別受益・寄与分」とは?
ご家族が亡くなり、相続の手続きを進めていると、「遺留分」「特別受益」「寄与分」といった、普段聞き慣れない言葉を目にすることがありますよね。それぞれの意味がはっきりせず、他の相続人との話し合いの中で「自分の取り分はどうなるのだろう?」と不安に感じてしまう方も少なくありません。
これらの制度は、相続を複雑にするためにあるのではなく、相続人間の公平を保つための大切な仕組みです。相続手続をしていると専門的な用語が出てきて、よくわからなくなってしまうことがあるかもしれませんが、基本的な情報を整理することで、ご自身の状況を客観的に見つめ直すきっかけになります。
この記事では、これら3つの制度の基本的な違いと、お互いにどう関係するのかを分かりやすく解説していきます。一つひとつ整理していけば、きっとご自身の状況と照らし合わせて、次に何をすべきかが見えてくるはずです。
なお、この記事はあくまでも各制度の概要の解説になっており、わかりやすさを優先させているため、厳密にとらえると不正確な表現が含まれておりますことあらかじめご承知おきください。
【比較表】遺留分・特別受益・寄与分の違いと関係性
まずは、3つの制度がそれぞれどのような役割を持っているのか、全体像をつかんでみましょう。下の表で、それぞれの目的や特徴を比較してみてください。
| ::: | 遺留分 | 特別受益 | 寄与分 |
|---|---|---|---|
| 制度の目的 | 遺言の内容にかかわらず、相続人に最低限の取り分を保障する | 生前に受けた援助(贈与)を考慮し、相続人間の公平を図る | 故人の財産の維持・増加に貢献した相続人に報いる |
| 誰が対象? | 配偶者、子(または孫)、直系尊属(父母など)※兄弟姉妹にはありません | 特別受益(生前贈与等)を受けた相続人がいる場合(その受領分が問題になります) | 相続人全員 |
| いつ問題になる? | ・遺言で自分の取り分が極端に少ない、または無い場合・特定の相続人に多くの遺産が渡る内容の遺言がある場合 | ・特定の相続人だけが生前に多額の援助を受けていた場合 | ・特定の相続人が故人の事業や介護で特別な貢献をしていた場合 |
| 権利の性質 | 最低限の保障 | 生前贈与の持ち戻し | 貢献分の上乗せ |
このように、遺留分は「最低保証」、特別受益は「生前の援助の調整」、寄与分は「貢献への報い」と考えると、それぞれの役割の違いがイメージしやすくなるのではないでしょうか。これらはすべて、遺産分割を公平に進めるための大切な考え方なのです。
3つの制度をケース別に解説
それでは、それぞれの制度について、もう少し具体的に「どのようなケースで問題になるのか」を見ていきましょう。
遺留分:最低限保障される相続人の権利
遺留分とは、たとえ遺言書に「全財産を長男に」と書かれていたとしても、他の相続人(例えば配偶者や次男)が「法律で定められた最低限の割合は受け取れますよ」という権利のことです。
これは、故人の意思(遺言)を尊重しつつも、残された家族の生活保障という観点から設けられた権利といえます。
【具体例】
「全財産を長男に相続させる」という遺言があった場合でも、次男は法定相続分の半分にあたる遺留分を長男に対して請求することができます。この請求を「遺留分侵害額請求」と呼びます。
特別受益:生前の援助を相続分に反映させる制度
特別受益とは、特定の相続人が故人から生前に受けた特別な援助(贈与)を、遺産の前渡しとみなして、相続財産に含めて計算し直す制度です。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。
目的は、相続人間の実質的な公平を保つことにあります。もしこの制度がなければ、生前にたくさんの援助を受けた相続人が、残った遺産も他の相続人と同じ割合で受け取ることになり、不公平が生じてしまうからです。なお、遺産の使い込みとは性質が異なります。
【具体例】
長男だけが、親から家を建てるための資金として1,000万円の援助を受けていたケース。この1,000万円を「特別受益」として遺産に加算したうえで、各相続人の取り分を計算します。長男はすでに1,000万円を前渡ししてもらっている、と考えるわけです。
寄与分:故人への貢献を評価する制度
寄与分とは、故人の財産の維持または増加に対して「特別な貢献」をした相続人が、その貢献分を上乗せして財産を受け取れる制度です。
この制度は、法律で決まった画一的な相続分だけでは公平とはいえないケースで、貢献した人がきちんと報われるように設けられています。例えば、認知症の親の介護など、相続人が貢献するケースは少なくありません。ただし、後述するように家庭裁判所での調停や審判となった場合、寄与分が認められるためのハードル(要件)はかなり高く、一般的な介護ではなかなか認めてもらえないのが現実です。
【具体例】
長女が仕事を辞めて、長年にわたりつきっきりで親の介護をしたことで、本来であれば必要だった高額な介護施設の費用がかからず、親の財産が維持されたケース。この貢献を金銭的に評価し、遺産総額から寄与分として長女が先に受け取り、残りを他の相続人と分けることになります。

知っておきたい注意点と計算の考え方
ここでは、皆さんが特に気になるであろう「計算への影響」といった、より実践的な注意点について解説します。
特別受益があると遺留分はどう計算する?
「兄だけが生前に親から多額の援助を受けていた。自分の遺留分はどうなるの?」これは非常によくあるご質問です。
結論から言うと、特別受益にあたる生前贈与がある場合、遺留分として請求できる金額が増える場合があります。
【具体例】
- 相続人:長男と次男の2人
- 残された遺産:5,000万円
- 長男への特別受益(生前贈与):3,000万円
(長男への生前贈与3,000万円が特別受益にあたる場合)遺留分を計算するための基礎財産は、残された遺産5,000万円に長男への特別受益3,000万円を加えた8,000万円となります。
次男の遺留分は、この基礎財産8,000万円に、法定相続分(1/2)と遺留分割合(1/2)を掛け合わせた2,000万円(8,000万円 × 1/2 × 1/2)となります。
もし特別受益を考慮しないと、次男の遺留分は1,250万円(5,000万円 × 1/2 × 1/2)となり、その差は歴然です。このように、特別受益の存在は遺留分の金額に大きく影響する場合があります。
寄与分が認められないのはどんなケース?
「親の面倒をみてきたのだから、寄与分が認められるはず」と考える方は多いですが、実は寄与分が認められるためのハードルは決して低くありません。
寄与分は、あくまで「特別な貢献」に対して認められるものです。そのため、以下のようなケースでは認められない可能性が高いので注意が必要です。
- 親子間の扶養義務の範囲内とみなされる行為
(例:時々、実家に帰って身の回りの世話をする、お小遣いを渡すなど) - 貢献に対する対価(給料など)を得ていた場合
(例:親族経営の会社で役員報酬をもらいながら事業を手伝っていたなど)
法律上、家族にはお互いに助け合う義務(扶養義務や協力義務)があるとされています。その義務の範囲内と判断されるような一般的な手伝いや介護では、「特別な貢献」とは評価されにくいのが実情です。
あなたの状況は?次に何をすべきか
ここまで解説してきた内容を踏まえ、ご自身の状況を整理し、次の一歩を考えてみましょう。
まずは証拠や記録を整理しましょう
特別受益や寄与分について話し合う際、感情的な主張だけでは話がまとまりません。重要になるのは、客観的な証拠です。
- 特別受益の場合:いつ、いくらの贈与があったか分かる預金通帳の記録、契約書、メールなど
- 寄与分の場合:介護の内容や期間を記録した日記やメモ、医療費や介護サービスの領収書、他の相続人とのやり取りなど
まずは冷静に、事実関係を証明できる資料を集めることから始めましょう。これが、建設的な話し合いへの第一歩となります。
相続人同士での話し合いが原則です
遺産の分け方について、まず目指すべきは相続人全員での話し合い(遺産分割協議)による円満な解決です。集めた資料をもとに、お互いの主張を冷静に伝え、合意点を探ることが大切です。この話し合いで全員が合意すれば、その内容を遺産分割協議書として作成します。
もちろん、当事者だけでは感情的になってしまい、話し合いが難しいこともあります。しかし、いきなり法的な手続きに進むのではなく、まずは話し合いの場を持つことが原則であると思います。
複雑な場合は専門家への相談も検討しましょう
遺留分、特別受益、寄与分が複雑に絡み合うケースや、相続人間の対立が深く話し合いが困難な状況では、ご自身たちだけで解決しようとすると、かえって関係が悪化してしまうことも少なくありません。
法的な観点からご自身の状況を整理し、どのような主張が可能か、どのようなリスクがあるかを把握するだけでも、冷静に対応できるようになります。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも有効な選択肢の一つです。
習志野市、八千代市およびその周辺地域で相続についてお悩みの方は、一度、司法書士和久咲法務事務所にご相談ください。弁護士が必要な場合は、ご紹介をさせていただくこともできます。
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