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遺産分割で不動産の共有は避けるべき?安易な選択が招く未来
ご家族が亡くなられ、遺産分割の話し合いを進める中で、不動産をどう分けるかという問題は、多くの方が頭を悩ませる点のひとつです。「相続人の間で揉めたくないし、法定相続分どおりに共有名義にするのが一番公平で円満なのでは?」、そうお考えになるお気持ちは、とてもよく分かります。
しかし、その「とりあえず公平に」という一見円満に見える選択が、将来、ご自身やお子さん、お孫さんの代にまで続く、深刻なトラブルの火種になりかねないことをご存知でしょうか。
最初は仲の良かった兄弟姉妹でも、時が経てばそれぞれの家庭の事情も変わります。いざ不動産を売りたいと思っても、一人でも反対すれば話は進みません。固定資産税の支払いを誰がするのかで、気まずい空気が流れることもあります。そして、誰かにまた相続が起きた時、関係はさらに複雑になっていくのです。
この記事では、遺産分割で不動産を共有名義にすることの具体的なデメリットと、もし共有状態になってしまった場合の解消法について、分かりやすく解説していきます。この記事を読み終える頃には、不動産の共有がもたらすリスクを正しく理解し、ご自身の状況にとって最善の選択肢は何かを見つけていただけるはずです。相続の全体像については、遺産分割協議とは?いつ・誰が・何を決める手続きかで体系的に解説していますので、併せてご覧ください。
不動産を共有名義にする5つのデメリット
不動産を共有名義にすることで、具体的にどのような問題が起こるのでしょうか。ここでは、特に深刻な5つのデメリットを解説します。一つひとつが、将来の大きなトラブルに繋がりかねない重要なポイントです。
1. 売却や活用に共有者全員の同意が必要になる
共有名義の不動産を売却したり、抵当権を設定したりするなどの処分や、建て替え等の共有物の「変更」に当たる行為をするには、原則として共有者全員の同意が必要です。一方で、共有物の通常の管理に関する事項は、持分の価格に従い過半数で決するのが原則です。たとえ持分が100分の1しかない共有者が一人でも反対すれば、他の全員が賛成していても、売却や建て替えは一切できなくなってしまいます。
例えば、「自分は住み続けたい」と考える兄弟と、「もう使わないから売却して現金化したい」と考える兄弟の間で意見が対立するケースは少なくありません。この「全員一致の壁」が、不動産をどうすることもできない「塩漬け」状態にしてしまう原因の一つです。
2. 固定資産税などの費用負担で揉めやすい
不動産を所有している限り、毎年固定資産税がかかります。共有名義の場合、共有者全員が連帯して納税義務を負うことになります。しかし、役所から送られてくる納税通知書は、代表者一人にしか届きません。
そのため、代表者が立て替えて他の共有者からお金を集める必要がありますが、「実際に住んでいる人が多く払うべきだ」「自分は使っていないのに、なぜ同じ額を払うのか」といった不公平感から、支払いが滞るケースがあります。もし誰かが支払わなければ、最終的には他の共有者に請求が来てしまい、金銭トラブルが人間関係に深い溝を作ってしまうことも珍しくありません。
3. 世代交代で権利関係が「ねずみ算式」に複雑化する
共有状態を放置することの最も恐ろしいリスクが、この権利関係の複雑化です。共有者の一人が亡くなると、その人の持分は、さらにその相続人へと引き継がれます。
最初は兄弟2人の共有だった不動産が、次の世代ではそれぞれの子供たち、つまり甥や姪を含む4人、5人の共有になるかもしれません。そしてさらに次の世代へと相続が重なると、会ったこともない遠い親戚を含む数十人が共有者になる、という事態も現実に起こり得ます。
このように共有者が「ねずみ算式」に増えてしまうと、全員の所在を確認し、同意を取り付けることは事実上不可能になります。これが、全国で問題となっている所有者不明土地の一因でもあるのです。
4. 自分の持分だけの売却は難しく、安くなる
遺産分割で不動産を共有にするのは、後々のトラブルの元になりかねません。例えば、不動産を売却しようとしても、共有者全員の同意がなければ全体を売ることはできません。もし誰かが亡くなれば、その相続人を確定させるための相続登記が必要になり、共有者がどんどん増えてしまう可能性もあります。
ここで、「自分の持分だけなら、他の人の同意なく売れるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。法律上、自分の持分だけを売却することは可能です。しかし、問題は「誰が買うのか」です。
考えてみてください。一つの家の一部分の権利だけを欲しがる一般の買い手は、まず現れません。結果として、買い手は持分買取を専門とする不動産業者などに限られ、価格も市場価格よりも安い金額となることが多いようです。そして、見ず知らずの業者が新たな共有者として加わることで、残された家族との間で新たなトラブルが生まれる火種にもなりかねません。これは法的に全く問題ない行為であるため、止めることができないのが難しいところです。
5. 共有者が認知症などになると手続きが凍結する
高齢社会において、これは非常に現実的なリスクです。もし共有者の一人が認知症などで判断能力を失ってしまった場合、その人は不動産の売却などに法的に有効な同意をすることができなくなります。
つまり、他の共有者全員が売却に賛成していても、その一人のために、不動産に関するあらゆる手続きが完全に凍結されてしまうのです。
この状況を解決するためには、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選んでもらう必要があります。しかし、この手続きには数ヶ月の時間と費用がかかります。さらに、後見人が選任されたとしても、本人の財産を守ることが最優先されるため、不動産の売却が本人の利益にならないと判断されれば、売却が認められない可能性も十分にあります。特に共有の農地などは、活用の見込みがなければ、さらに判断が難しくなるでしょう。
【相続発生後】共有名義を避けるための3つの遺産分割方法
では、不動産を共有にせず、円満に遺産分割を終えるにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、代表的な3つの方法をご紹介します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合った方法を検討することが大切です。どの方法を選ぶにしても、その内容を遺産分割協議書に明確に記載することが重要です。

①不動産を売却して現金で分ける「換価分割」
換価分割は、相続した不動産を売却し、その売却代金を相続人で分け合う方法です。1円単位で公平に分けられるため、相続人間の不公平感が生まれにくいのが最大のメリットです。誰もその家に住む予定がない場合には、最も合理的な選択肢と言えるでしょう。
ただし、注意点もあります。まず、不動産が売れるまでには時間がかかります。また、売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税という税金がかかる可能性があります。そして何より、ご家族の思い出が詰まった家を手放すことへの寂しさなど、感情的な側面も無視できません。状況によっては、遺産分割協議を複数回に分けて、先に不動産を売却することも考えられます。
②一人が相続し、他の相続人にお金を払う「代償分割」
代償分割は、相続人のうちの一人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して、それぞれの法定相続分に相当するお金(代償金)を支払う方法です。これにより、不動産を売却せずに手元に残すことができます。
この方法の最大のハードルは、不動産を相続する人に、代償金を支払えるだけの十分な預貯金などがあるかどうかです。また、代償金の額を決める前提となる不動産の評価額をいくらにするかで、相続人同士の意見が対立しやすいという点も、実務上よく見られる注意点です。
③土地を分けてそれぞれが単独所有する「現物分割」
現物分割は、一つの土地を複数の土地に登記上分ける(分筆する)ことで、それぞれの土地を各相続人が単独で所有する方法です。例えば、広い土地を2つに分け、長男と次男がそれぞれ一つの土地を相続する、といった形です。
この方法は、土地が十分に広く、分割してもそれぞれの土地の価値が下がらない場合に有効です。しかし、土地を分筆するには測量や登記の費用がかかりますし、道路に面しているか、日当たりはどうかなど、分け方によって土地の価値に差が出てしまい、新たな不公平感を生む可能性もあります。建物が土地にまたがって建っている場合など、利用が難しいケースも多く、適用できる場面は限られます。
【相続済み】不動産の共有状態を解消するための具体的な方法
すでに不動産を共有名義で相続してしまい、今まさに悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。ご安心ください、共有状態を解消する方法はあります。共有者全員の協力が得られるかどうかで、進め方が変わってきます。
共有者全員で話し合う:持分の売買・贈与や不動産全体の売却
まず基本となるのは、共有者全員での話し合いです。解決策としては、以下のような方法が考えられます。
- 持分の売買・贈与:共有者の一人が、他の共有者の持分をすべて買い取り、単独名義にする。
- 不動産全体の売却:共有者全員で協力して不動産全体を第三者に売却し、その代金を持分に応じて分配する(換価分割と同じ考え方です)。
話し合いで円満に合意できれば、それが最もスムーズな解決策です。ただし、持分の買取価格などで交渉が難航することも少なくありません。合意できた場合は、後々のトラブルを防ぐためにも、必ずその内容を「共有物分割協議書」として書面に残しておくことが非常に重要です。
話し合いが困難な場合:共有物分割請求調停・訴訟
当事者間の話し合いがまとまらない、あるいは話し合い自体ができない場合の最終手段が、裁判所の手続きである「共有物分割請求」です。
当事者間の話し合いがまとまらない場合は、裁判所の手続(民事調停の利用や、共有物分割請求訴訟の提起)を検討することになります。
もし共有者が死亡したら?手続きはさらに複雑に
共有問題を先送りにする中で、もし共有者の一人が亡くなってしまったら、亡くなった共有者の持分は、その共有者の相続人に引き継がれます。
例えば、兄弟3人で共有していた不動産について、長男が亡くなったとします。この場合、長男の相続人(妻や子)の間で、長男の持分を誰が相続するのかを決める遺産分割協議が必要です。そして、その協議がまとまった上で、ようやく元の兄弟(次男・三男)と、長男の持分を新たに相続した人(甥や姪など)とで、不動産全体の共有をどうするかという話し合いをしなければならなくなります。
このように、共有者が死亡すると関係者が増え、話し合いの当事者が世代の違う甥や姪などとなり、問題解決もますます複雑・困難になることが想定されます。

まとめ:不動産の共有問題は、先送りにせず早めにご相談を
遺産分割における不動産の共有は、一見すると公平で円満な解決策に思えるかもしれません。しかし、実際には将来にわたって多くのトラブルの種を内包しています。
「売れない、貸せない、建て替えられない」という塩漬け状態に陥り、世代を超えて権利関係が複雑化していく…。そんな事態を避けるためには、遺産分割の話し合いの段階で、なるべく共有としないという共通認識を相続人間で共有することが大切です。ご紹介した「換価分割」「代償分割」「現物分割」の中から、ご家族の状況に合った方法を話し合ってみてください。
もし、すでに不動産を共有名義にしてしまいお困りの場合でも、解決の道はあります。しかし、共有関係の解消には法律的な知識が不可欠であり、当事者同士の話し合いだけでは感情的になり、かえって事態をこじらせてしまうことも少なくありません。
問題を先送りにせず、できるだけ早い段階で専門家に相談することが、円満な解決への一番の近道です。一人で抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。
習志野市、八千代市およびその周辺地域にお住まいの方で、遺産分割協議や不動産の共有問題でお悩みでしたら、司法書士和久咲法務事務所までお気軽にご相談ください。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
