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遺産分割協議と不在者財産管理人
人が亡くなると、その人が持っていた財産は相続財産となります。
その相続財産を誰が承継するかは、相続人全員による話し合いである「遺産分割協議」で決めることになります。
遺産分割協議は相続人全員の参加が必要である点がポイントです。
つまり、相続人の中に行方不明の方や長い間連絡が取れないような方がいる場合、遺産分割協議を成立させることができません。
そのようなケースでは「不在者財産管理人」の選任が必要となることがあります。
そこで、今回は、簡単に遺産分割協議について触れた後、不在者財産管理人の制度等についてご案内します。
遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員による遺産分けの話し合いであり、相続人全員の合意があれば、どのような遺産分けの内容でも構いません。
例えば「長男がすべて相続する」という内容でも認められ、法定相続分通りでなくても全く問題ありません。
相続人全員による合意ができた場合、その内容を「遺産分割協議書」に記載し、相続人全員が署名・押印する必要があります。
押印はいわゆる実印(市町村に印鑑登録をしている印鑑)で行う必要があります。
このように、遺産分割協議は「相続人全員」で行う必要があり、一人でも欠けているとその協議は無効です。
したがって、相続人の中に行方不明の方がいるような場合は、その方に代わる人を選任する必要があります。
その代わりの人=不在者財産管理人です。
不在者
不在者とは「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者」とされています。
例えば「家出をして帰る見込みのない者」は不在者と考えれれる一方、単に長い期間連絡を取っていないというだけで、居場所や容易に連絡が取れるような場合は不在者には当たらないとされています。
不在者財産管理人
相続人の中に不在者がいる場合、遺産分割協議を成立させるために、不在者財産管理人を選任する必要があります。
不在者財産管理人は、相続人などの利害関係人が家庭裁判所に選任の申立てをすることにより選任されます。
申立は、不在者の従来の住所地(居所地)を管轄する家庭裁判所です。
申立には以下のような書類が必要となります。
①申立書
②不在者の戸籍謄本・戸籍の附票
③不在者財産管理人候補者の住民票
④不在の事実を証する資料
→例えば、不在者あての手紙で「あて所に尋ねあたらず」のスタンプが押されて
返送された郵便物など
⑤不在者の財産に関する資料(登記簿謄本等)
⑥利害関係を証する資料
→申立人と不在者が親族関係の場合は、それがわかる戸籍謄本等
申立後、家庭裁判所において調査等が行われます。
その上で、不在者財産管理人の選任の要件を満たしていると判断された場合は、
不在者財産管理人が選任されます。
なお、申立の際、不在者財産管理人の候補者を記載することはできますが、誰を選任するかはあくまでも家庭裁判所の判断であり、必ずしも候補者が選任されるとは限りません。
また、選任された不在者財産管理人について、不服を申し立てることはできません。
遺産分割協議と家庭裁判所の許可
不在者財産管理人が選任されたとしても、不在者財産管理人には、遺産分割協議に合意する権限はありません。
別途、遺産分割協議に合意するための家庭裁判所の許可を得る必要があります。
不在者財産管理人は不在者の利益を保護する義務があります。
そのため、他の相続人と遺産分割協議を行う際も、不在者の代弁者として権利行使をする必要があります。
具体的には、不在者のために原則として法定相続分の確保が求められます。
例えば、被相続人が父・相続人が子3人・相続財産が3,000万円の場合、子のうちの一人に不在者財産管理人が選任されたとすれば、少なくとも不在者の相続分として法定相続分である1,000万円分の財産を確保する必要があります。
仮に「主な相続財産が自宅不動産・預貯金はわずか数百万円程度であり、その全ての不在者以外の相続人が相続するつもり」であったとしても、多くの場合、不在者のために法定相続分の確保が求められます。
不在者財産管理人は、他の相続人と遺産分割協議が合意できる見込みが立った段階で、家庭裁判所にその内容で協議を成立させて良いかどうか許可を申し立てます。
無事、遺産分割協議の内容に許可がでれば、不在者財産管理人は他の相続人とともに遺産分割協議書に署名・押印をすることとなります。
その後は、その遺産分割協議書を使用して、相続登記や預貯金の相続手続を行っていくこととなります。
最後に
遺産分割協議は相続人全員によって行う必要がありますが、相続人の中に行方不明者がいる場合は、不在者財産管理人を選任する必要があります。
不在者財産管理人は、不在者の利益を守る必要があります。
そのため、遺産分割協議の内容として、不在者の相続分として、少なくとも法定相続分を確保する必要があります。
遺産分割協議は、相続人の合意があれば、「どのような内容でも自由に」定めることができます。
しかし、不在者財産管理人が選任された場合、不在者の法定相続分を確保する必要があるため「どのような内容でも自由に」とはいかない場合があることに留意する必要があります。
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