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遺産分割協議は口約束でも有効?
遺産分割協議の口約束、法的には有効?
ご親族が亡くなり、相続人同士で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議。その話し合いで「じゃあ、これでいこう」と口約束だけで済ませてしまい、不安に思われている方もいらっしゃるかもしれません。
結論から申し上げますと、遺産分割協議は、相続人全員が合意すれば口約束でも法律上は成立し得ます。一般に、法律で書面などの方式が定められていない限り、当事者の合意で成立するという考え方があるためです。
しかし、これはあくまで法律上の理屈の話。「口約束でも有効」という言葉を鵜呑みにしてしまうと、後々、深刻なトラブルに発展する可能性がないとはいえません。
特に、相続財産に不動産が含まれている場合、口約束だけでは手続きが進まないという現実があります。なぜなら、不動産の名義変更(相続登記)を行う法務局では、口頭での合意内容を確認するという方法が用意されておらず、不動産登記法上「遺産分割協議書」の提出が求められているからです。
つまり、理論上は有効でも、実務上は書面を求められることが多い、というのが実情なのです。この記事では、なぜ口約束が危険なのか、具体的なトラブル事例を交えながら、そのリスクと今からでもできる対処法を分かりやすく解説していきます。
口約束がトラブルを招く事例
「うちは家族仲がいいから大丈夫」と思っていても、お金や不動産が絡むと、人の気持ちは変わりやすいものです。口約束の遺産分割がいかに危ういか、ここで2つの事例を見ていきましょう。

事例1:「言った言わない」で約束が反故にされるケース
これは「言った言わない」の水掛け論のケースです。
例えば、相続人が長男と次男の二人で、「父の財産はすべて長男が相続する代わりに、長男が次男へ代償金として300万円を支払う」という口約束が成立したとします。しかし、いざ手続きを進めようとしたとき、次男が「そんな約束はしていない。法定相続分にしたがって、父の財産の半分をもらう権利があるはずだ」と主張を変えてきたらどうなるでしょうか。
長男が「いや、あの時たしかに合意したじゃないか」と反論しても、何らかの客観的な証拠がなければ、合意があったことを証明するのは極めて困難です。もし裁判になったとしても、約束の存在を主張する側(この場合は長男)が、その証拠を提出する責任を負わなければなりません。結局、証明できずに当初の約束は反故にされ、遺産分割は振り出しに戻ってしまいます。これまでの時間と信頼関係は、もろくも崩れ去ってしまうのです。
事例2:相続人が亡くなり、話がさらに複雑化するケース
口約束で合意した後、「まあ、いつでも書面にできるだろう」と手続きを先延ばしにしている間に、相続人の一人が亡くなってしまうケースも少なくありません。これを「数次相続」といいます。
仮に、祖父の遺産分割について父と叔父が口頭で合意した直後、父が亡くなってしまったとしましょう。すると、父が持っていた「祖父の遺産を分割してもらう権利」は、母と子である私たちが相続することになります。
私たちは、父と叔父がどんな内容で合意したのか詳しい経緯を知りません。叔父から「お父さんとはこう約束したんだ」と言われても、それが本当かどうか分かりませんし、私たちとしては納得できない内容かもしれません。
当初は2人だった話し合いが、関係者が増えることで意見の集約は格段に難しくなります。問題を先送りにすることで、このように関係者が増え、解決がさらに遠のいてしまうリスクがあるのです。
なぜ口約束だけでは不動産の名義変更ができないのか?
預貯金の解約手続きなどでは、金融機関所定の用紙に相続人全員が署名・押印すれば、遺産分割協議書がなくても手続きが進められる場合があります。しかし、不動産の名義変更(相続登記)を遺産分割協議の内容に基づいて進める場合、口約束だけでは申請手続を進めることはできません。
法務局の登記官は、相続人同士がどのような話し合いをしたのか知る由もありません。「長男が家を継ぐことで全員納得しました」と口で伝えても、それが真実であるか、また他の相続人が本当に同意しているのかを客観的に判断できないのです。
そのため、不動産登記法では相続による不動産の名義変更の申請において、「誰が、どの不動産を相続したのか」について、「相続人全員が合意したこと」を証明する客観的な書面の提出を求めます。それが「遺産分割協議書」であり、そこには相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付することが必要不可欠なのです。
2024年4月からは相続登記が義務化され、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内の相続登記が必要となり、怠った場合は過料の対象となる可能性もあります。遺産に不動産が含まれる場合は、遺産分割協議書の作成は避けて通れない手続きだとご理解ください。
参照:相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等(PDF)
今からでも間に合う!口約束を確実なものにする3ステップ
「もう口約束してしまったけれど、やっぱり不安…」と感じている方、ご安心ください。今からでも決して遅くはありません。以下の3つのステップで、口頭での合意を確実なものにしていきましょう。

ステップ1:合意内容を全員で再確認し、書面にまとめる
まずは、相続人全員でもう一度集まるか、連絡を取り合い、以前に口頭で合意した内容を再確認することから始めます。
- 誰が(相続人)
- どの財産を(不動産、預貯金、株式など)
- どのように取得するのか(すべて取得、〇分の〇の割合で取得など)
これらの内容について、全員の認識が一致しているか、一つひとつ丁寧に確認しましょう。その場で箇条書きのメモでも構いませんので、全員が見える形で文字に起こしていくのがおすすめです。「言った言わない」のトラブルは、そもそも最初の認識がズレていることも原因の一つです。この段階でズレが見つかれば、早い段階で修正することができます。
ステップ2:正式な「遺産分割協議書」を作成する
ステップ1で全員の認識が一致したら、その内容を基に法的に有効な「遺産分割協議書」を作成します。ご自身で作成することも可能ですが、特に不動産が含まれる場合は記載方法に厳密なルールがあるため注意が必要です。
遺産分割協議書には、主に以下の項目を記載します。
- 被相続人(亡くなった方)の本籍、最後の住所、氏名、死亡年月日
- 相続人全員の住所、氏名
- 遺産分割協議が成立した旨の文言
- 誰がどの財産を相続するのかという具体的な分割内容
- 協議書に記載のない財産が見つかった場合の取り扱い(必要であれば)
- 協議が成立した年月日
不動産については、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている通り、所在地や地番、家屋番号などを正確に記載するようにします。誤りがある場合、法務局で手続きを受け付けてもらえない可能性があります。不安な場合は、遺産分割協議書の作成を専門家に依頼するのもよいでしょう。
ステップ3:相続人全員で署名し、実印で押印する
完成した遺産分割協議書を相続人全員に確認してもらい、内容に間違いがなければ、各自で署名し、実印を押印します。
実印とは、市区町村に登録した印影の印鑑のことです。言い換えれば、市区町村で取得できる印鑑登録証明書の表示されている印影の印鑑のことです。
ちなみに、実印以外の印鑑を認印などと呼ぶことが多いです。
全員の署名と実印での押印が揃った時点で、初めてその遺産分割協議書は法的な証明力を持つ強力な証拠となります。これで、口約束の状態から脱し、合意内容が法的に保護される状態になったと言えるでしょう。
それでも話がまとまらない場合の相談先
いざ遺産分割協議書を作成しようとしたら、「やはり納得できない」と言い出す相続人が現れ、話がこじれてしまうこともあるかもしれません。当事者同士での解決が難しいと感じたら、次のステップとして家庭裁判所での「遺産分割調停」という手続きを利用する方法があります。
遺産分割調停とは、裁判官や調停委員という中立な第三者を交えて、相続人全員が納得できる解決を目指して話し合いを進める手続きです。あくまで話し合いの場なので、冷静に意見を交換し、合意点を探ることが期待できます。
しかし、調停の手続きは申立て書類の作成などが複雑で、ご自身だけで進めるのは大きな負担となります。また、相続人が揃わないなど、状況が複雑化している場合は、早期に専門家へ相談することをおすすめします。法的な観点から状況を整理し、あなたにとって最善の解決策を一緒に考え、サポートすることが可能です。
遺産分割でお困りの際は、一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
遺産分割の相談・お問い合わせ
まとめ:口約束のリスクを理解し、必ず書面で証拠を残しましょう
この記事の重要なポイントをもう一度振り返りましょう。
- 口約束も法的には有効だが、証明できなければ意味がない。「言った言わない」のトラブルを防ぐためにも、証拠となる書面が不可欠です。
- 不動産を遺産分割協議の内容に基づいて相続登記する場合、書面化された遺産分割協議書が必要。法務局での名義変更手続きで求められる重要書類となります。
- トラブル防止のため、必ず相続人全員の合意を書面に残すべき。後から覆されたり、新たな相続人が現れたりするリスクに備えることができます。
相続手続きは、ご家族の今後の関係にも影響を与えかねない問題を含むことがあります。口約束で済ませてしまうその手軽さは、将来の大きなトラブルの火種になり得ます。「あの時、きちんと書面にしておけばよかった…」と後悔しないためにも、合意内容は必ず遺産分割協議書として形に残しておくことが大切です。
もし手続きの進め方や書類の作成で少しでも不安な点があれば、専門家を頼ることも有効な選択肢の一つです。円満な相続を実現するために、安全で確実な方法を選びましょう。
習志野市や八千代市で遺産分割協議でお困りの場合は、司法書士和久咲法務事務所までお気軽にご相談ください。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
遺産分割協議は複数回できる?不動産売却や費用も解説
遺産分割協議は複数回に分けても問題ありません
ご相続が発生し、遺産をどう分けるか話し合う「遺産分割協議」。多くの方が「一度の話し合いで、すべての財産について決めなければならない」と思われているかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。結論からお伝えすると、遺産分割協議は複数回に分けて行うことが可能です。
遺産分割協議は1回ですべての事柄を決める必要があると思われていることが多いですが、財産が多い場合や、話し合いがまとまらない場合など、遺産分割を複数回に分けて行うこともあり、有効です。例えば、相続税の納税資金の確保や、他の相続人への代償金の確保を目的として、相続財産の一部である不動産を売却するため、その不動産のみの遺産分割協議をすることがあります。
このように、一度にすべての財産について合意するのが難しい場合、合意できた財産から順に分割協議を進めていくことは、むしろ現実的で有効な方法といえます。
「一度で全部決めないと…」というプレッシャーを感じる必要はありません。まずは状況を整理し、段階的に進めていく選択肢があることを知っていただくだけでも、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。遺産分割協議の手続きの全体像については、遺産分割協議の手続きの全体像で体系的に解説しています。
「複数回に分ける」と「やり直し」は全く違います
遺産分割協議について調べていると、「複数回に分ける」話と「やり直す」話が混同されがちですが、この二つは法的に全く異なる手続きです。この違いを理解することが、思わぬトラブルや税金の負担を避けるための重要な第一歩となります。
両者の違いを、下の表で比べてみましょう。

| 項目 | 複数回に分ける(一部分割) | やり直し(再協議) |
|---|---|---|
| 目的 | 未分割の財産について、新たに協議する | 一度確定した分割内容を、合意の上で覆す |
| タイミング | 最初の協議で一部財産のみ合意した後 | すべての財産について協議が完了した後 |
| 法的効力 | 各協議がそれぞれ有効に成立する | 最初の協議を合意解除し、新たな協議を成立させる |
| 税務上の主なリスク | 特になし(通常の相続税の範囲) | 贈与税や不動産取得税などが課される可能性 |
複数回に分ける「一部分割」とは
一部分割とは、その名の通り、遺産の一部についてのみ先行して分割協議を成立させる方法です。すべての財産について一度に合意するのが難しい場合に、合意が整った財産から順に手続きを進めていきます。
一部分割のメリットは、主に以下の点が挙げられます。
- 納税資金などを早期に確保できる:不動産などを先に売却し、相続税の支払いに充てることができます。
- 手続きを円滑に進められる:意見がまとまりやすい財産から分割を進めることで、膠着状態を避けられます。
- 心理的な負担が軽くなる:一度にすべてを決めなければならないというプレッシャーから解放されます。
一方で、全体のバランスが見えにくくなったり、複数回にわたって協議書を作成・管理する手間がかかったりする点はデメリットといえるかもしれません。しかし、計画的に進めることで、複雑な相続をスムーズに進めるための有効な手段となります。
合意を覆す「やり直し(再協議)」とは
一度成立した遺産分割協議は、法的に有効な契約と同じですので、原則として一方的にやり直すことはできません。しかし、相続人全員が「今の合意内容を白紙に戻して、もう一度協議し直しましょう」と合意すれば、例外的にやり直し(再協議)ができるとされています。
ただし、この「やり直し」には大きな落とし穴があります。それは税金の問題です。
法的には「全員の合意による契約の解除」ですが、税務上は「一度目の協議で取得した財産を、他の相続人に贈与したもの」とみなされる可能性があります。その結果、本来払う必要のなかった贈与税が課されてしまうリスクがあるのです。
また、不動産の名義変更(相続登記)を終えた後にやり直しをすると、再度名義を戻すための登記費用や、不動産取得税まで課されることもあります。安易なやり直しは、金銭的に大きな負担増につながる危険性をはらんでいるため、最後の手段と考えるべきでしょう。そのためにも、最初の遺産分割協議書の作成が非常に重要になります。
不動産だけ先に売却?一部分割の具体的な進め方
「相続税の支払いが迫っている」「誰も住む予定のない実家を早く現金化したい」といった理由で、不動産だけを先に分割したいというようなご要望があります。ここでは、一部分割を活用して不動産を先行して売却するための具体的な流れと注意点を解説します。

なぜ不動産だけ先に分割するのか?主な目的
不動産について一部分割を行う目的は、主に次の3つが考えられます。ご自身の状況がどれに当てはまるか確認してみましょう。
- 相続税の納税資金の確保:相続税は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に金銭で一括納付します(要件を満たす場合は延納・物納が認められることもあります)。手元の現金が不足している場合、不動産を売却して納税資金に充てるケースがあります。
- 他の相続人への代償金の支払い:特定の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人へ現金を支払う「代償分割」を行う際、その支払資金を確保するために別の不動産を売却することがあります。
- 利用予定のない不動産の早期現金化:空き家のまま放置すると、固定資産税がかかり続けるだけでなく、管理の手間や資産価値の低下といった問題も生じます。早期に売却して、管理の負担をなくし、相続人全員で現金を分け合う(換価分割)ことができます。
注意点:相続人全員の合意が絶対条件です
一部分割、特に不動産の売却を進める上で、最も重要で、かつ絶対的な条件は「相続人全員の合意」です。相続財産は、遺産分割協議が完了するまで相続人全員の共有財産となります。そのため、一人でも不動産の売却に反対する人がいれば、法的に売却手続きを進めることはできません。
「たぶん大丈夫だろう」といった口約束で進めるのは大変危険です。後から「そんな話は聞いていない」というトラブルに発展しないよう、誰が、どの財産を、どのように分割するのかを書面、つまり「遺産分割協議書」として明確に残しておくことが不可欠です。なお、相続人の中に判断能力が不十分な方がいる場合は、成年後見制度の利用を検討する必要があります。
一部分割のための遺産分割協議書の作り方
不動産を先行して売却する場合、その不動産を一旦相続人のうちの一人(または複数人)の名義に変更(相続登記)する必要があります。その際に法務局へ提出するのが遺産分割協議書です。
一部分割のための遺産分割協議書には、通常の協議書に加えて、特に重要な2つのポイントがあります。
- 今回分割する財産を限定する旨を明記する
「今回は下記の不動産についてのみ分割協議を行う」というように、協議の対象が遺産の一部であることを明確にします。これにより、他の財産については協議が未了であることが誰の目にも明らかになります。
不動産の情報を正確に記載しないと、登記手続きが滞る原因にもなりますので、登記事項証明書(登記簿謄本)通りに記載することが大切です。 - 残りの財産について別途協議する旨を記載する
「その他の財産については、後日改めて遺産分割協議を行う」といった一文(残余財産条項)を必ず入れましょう。この一文がないと、後になって「今回の協議で全て完了したはずだ」といった主張が出てくるリスクを防ぐことができます。
法務局が公開している記載例も参考になりますが、個別の事情に合わせて作成することが重要です。
複雑な遺産分割は専門家へ相談を
ここまでご覧いただいたように、遺産分割協議は複数回に分けて計画的に進めることが可能です。特に不動産の売却が絡む場合や、相続人の間で意見がまとまりにくい場合は、一部分割が有効な解決策となることもあります。
しかし、その手続きは法的な知識や税務上の注意点を伴い、ご自身だけで進めるのは簡単なことではありません。特に、一部分割のための遺産分割協議書の作成には、将来のトラブルを防ぐための専門的なノウハウが必要です。
安全かつ円滑に手続きを進めるためには、相続を専門とする司法書士などにご相談いただくことをお勧めします。ご相談いただくことで、手続の全体像の整理や必要書類の準備・作成などを通じて、相続手続きを進めるためのサポートを受けられるようになると思います。
習志野市・八千代市でのご相談はこちら
習志野市、八千代市およびその近隣にお住まいの方で、遺産分割協議がなかなかまとまらない、不動産の売却を伴う相続でどう進めたらよいか分からない、といったお悩みをお持ちでしたら、一度、司法書士和久咲法務事務所へご相談ください。
皆様のお話を丁寧にお伺いし、ご状況に合わせた最適な進め方をご提案いたします。相続に関する心労を少しでも軽くできるよう、全力でサポートさせていただきます。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
遺産分割協議とは?いつ・誰が・何を決める手続きか
遺産分割協議とは?相続でまず理解すべき3つの基本
ご家族が亡くなられ、悲しみに暮れる間もなく始まってしまうのが相続の手続きです。多くの方が初めての経験で、「何から手をつければいいのか…」と戸惑われることでしょう。特に「遺産分割協議」という言葉を耳にしても、具体的に何をするのか、よく分からないという方も少なくありません。
遺産分割協議とは、一言でいえば「亡くなられた方(被相続人)の遺産を、相続人全員でどのように分けるかを話し合うこと」です。この話し合いは、相続における重要なステップの一つと言えるでしょう。
多くの方が「そもそも遺産分割協議って何?」と感じているかと思います。そこで、まず押さえていただきたい基本が次の3つです。
- いつ行うのか:ご家族(被相続人)が亡くなられた後に行います。
- 誰が行うのか:相続人全員で行う必要があります。
- 何を決めるのか:亡くなった方の財産を誰がどのように引き継ぐかを決めます。
この3つの基本を理解するだけでも、相続手続きの全体像が少し見えてくるはずです。ここから、それぞれのポイントをもう少し詳しく見ていきましょう。
相続手続きの全体像については、相続手続きの大まかな流れで体系的に解説しています。
いつから始める?協議に期限はあるのか
「遺産分割協議はいつまでに終えなければならないのですか?」というご質問をよく受けます。実は、遺産分割協議そのものには、法律で定められた明確な期限はありません。「いつでも良い」と言われれば少し安心するかもしれませんが、手続きや内容によっては期限に注意しなければならないものもあります。
例えば、相続税の申告・納付には「相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月目の日まで」という期限が設けられています。
遺産分割協議がこの期限までにまとまっていないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった、相続税の負担を大きく軽減できる特例が利用できなくなってしまう可能性があります。相続税の具体的な内容については、税理士に確認していただく必要がありますが、10か月以内に遺産分割協議をまとめる必要性が高い手続きとしてご理解いただくとよいと思います。
その他の例では、遺産分割協議の中で特別受益や寄与分が主張できるのは相続開始から10年以内と定められています(令和5年4月1日の法改正)。
また、相続登記は、基本的に相続があったことを知った時から3年以内に行う必要があるので、不動産に関する遺産分割協議は3年以内が一つの目安になるかと思います。
誰が参加する?相続人全員の参加が絶対条件
遺産分割協議を進める上で、最も重要といえるルールがあります。それは、「相続人全員で参加し、全員が合意すること」です。
たとえ相続人のうちの一人でも欠けた状態で話し合いを進め、合意したとしても、その遺産分割協議は法的に無効となってしまいます。後から参加していなかった相続人が現れ、協議のやり直しを求められるといった大きなトラブルに発展しかねません。
中には、長年連絡が取れず行方不明の相続人がいたり、認知症で判断能力が不十分な相続人がいたりするケースもあるでしょう。このような場合、家庭裁判所で「不在者財産管理人」や「成年後見人」を選任するといった法的な手続きが必要になります。また、相続人に未成年者がいる場合は、親が代理人になれず「特別代理人」の選任が必要な場合もあります。相続人に認知症の方がいる場合など、ご自身で判断せず、手続きを進めることが重要です。
何を話し合う?遺産の分け方を決める
相続人全員が揃ったら、いよいよ本題です。遺産分割協議では、具体的に「誰が、どの財産を、どれくらいの割合で取得するのか」を話し合って決めていきます。
法律で定められた「法定相続分」という目安はありますが、必ずしもその通りに分ける必要はありません。相続人全員が納得すれば、自由に分け方を決めることができます。
主な分け方には、以下のような方法があります。
- 現物分割:「土地と建物は長男が、預貯金は次男が」というように、財産をそのままの形で分ける方法です。
- 代償分割:特定の相続人(例:長男)が不動産など分けにくい財産をすべて相続する代わりに、他の相続人(例:次男)に対して不足分を現金で支払う(代償金を支払う)方法です。
- 換価分割:不動産などを売却して現金に換え、その現金を相続人間で分ける方法です。公平に分けやすいのが特徴です。
- 共有分割:一つの不動産を、複数の相続人の共有名義にする方法です。将来的に売却や管理で意見が対立する可能性があり、慎重な判断が求められます。
どの方法が最適かは、遺産の内容や相続人の状況によって異なります。それぞれの希望を尊重し、冷静に話し合うことが円満な解決への第一歩です。
遺産分割協議の進め方|準備から完了までの5ステップ
遺産分割協議の全体像が見えてきたところで、次に「具体的にどう進めればいいの?」という疑問にお答えします。手続きは大きく分けて5つのステップで進んでいきます。この流れを把握しておけば、次に何をすべきかが明確になり、落ち着いて対応できるはずです。

ステップ1:遺言書の有無を確認する
相続手続きを開始するにあたり、何よりもまず確認すべきは「遺言書の有無」です。法的に有効な遺言書が残されている場合、原則としてその内容に従って遺産が分けられるため、遺産分割協議は不要です。
遺言書は、故人の自宅(仏壇や金庫など)や、重要書類として保管されていることも多いです。また、公証役場で「公正証書遺言」として作成されている場合や、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している可能性もあります。それらの場合は、公証役場や法務局で検索をすることができます。まずは心当たりのある場所を探してみましょう。もし遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になるケース(自筆証書遺言書保管制度を利用してない自筆証書遺言)もあります。
ステップ2:相続人と相続財産を調査・確定する
遺言書がない場合は、遺産分割協議の準備に入ります。協議の土台となるのが、「誰が相続人なのか(相続人の確定)」と「何を分けるのか(相続財産の確定)」です。
相続人の調査は、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取り寄せて行います。これにより、ご家族も知らなかった相続人(例えば、前妻の子など)が判明することもあります。
相続財産の調査では、預貯金、不動産、有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産もすべて洗い出します。この調査が不十分だと、後から新たな財産が見つかり、協議をやり直すことにもなりかねません。正確な財産目録を作成することが、後のトラブルを防ぐ鍵となります。
ステップ3:相続人全員で話し合う
相続人と財産がすべて確定したら、いよいよ相続人全員での話し合いです。「全員で」というと、一堂に会するイメージがあるかもしれませんが、必ずしも一堂に会する必要はありません。遠方に住んでいる、仕事の都合が合わないといった場合は、電話や手紙、メール、オンライン会議などを活用して協議を進めることも可能です。
大切なのは、全員が協議の内容を理解し、合意に参加することです。この段階では、それぞれの想いや生活状況の違いから、感情的な対立が生まれやすくなります。お互いの立場を尊重し、冷静に話し合うことを心がけましょう。
ステップ4:遺産分割協議書を作成する
話し合いがまとまったら、その合意内容を「遺産分割協議書」という書面にします。口約束だけでは、後になって「言った、言わない」のトラブルになる可能性がありますし、不動産の登記や預貯金の解約といった手続きの際に、金融機関や法務局から提出を求められるため、この書類の作成は原則として必須です。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印(市区町村に印鑑登録をしている印鑑のこと)で押印します。この書類が、相続手続きを進める上での法的な証明書となります。具体的な作成方法については、遺産分割協議書の作成に関する記事で詳しく解説しています。
ステップ5:協議書に基づき名義変更などの手続きを行う
遺産分割協議書を作成したら、それで終わりではありません。最後に、その協議書の内容に従って、各財産の名義変更手続きを行います。
- 不動産:法務局で所有権移転登記(相続登記)
- 預貯金:金融機関で解約または名義変更
- 株式:証券会社で名義変更
- 自動車:運輸支局で移転登録
これらの手続きをすべて終えて、ようやく遺産分割は完了となります。特に不動産の相続登記は2024年4月から義務化されており、注意が必要です。

遺産分割協議がまとまらない…そんな時の2つの解決策
相続人同士で話し合いを重ねても、どうしても意見がまとまらない。残念ながら、そうしたケースもあり得ます。感情的なしこりが残ったり、お互いの主張が平行線をたどったり…。当事者だけでの解決が難しいと感じたら、法的な手続きに移行することも選択肢の一つです。
相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での手続きが必要になります。主な解決策は「遺産分割調停」と「遺産分割審判」の2つです。
解決策1:家庭裁判所での「遺産分割調停」
まず検討するのが「遺産分割調停」です。これは、家庭裁判所で行う「話し合い」の手続きです。
調停では、裁判官と、民間の有識者から選ばれた「調停委員」が中立的な立場で間に入り、各相続人の主張や事情を丁寧に聞き取ってくれます。そして、解決に向けて助言をしたり、解決案を提示したりして、合意形成のサポートをしてくれます。
当事者同士が直接顔を合わせずに、調停委員を介して意見を伝え合うこともできるため、感情的な対立が激しい場合でも冷静に話し合いを進めやすいというメリットがあります。あくまで話し合いによる円満な解決を目指す手続きです。
解決策2:裁判官が判断を下す「遺産分割審判」
調停でも話し合いがまとまらず、不成立に終わってしまった場合、手続きは自動的に「遺産分割審判」へと移行します。
審判は、もはや「話し合い」ではありません。裁判官(家事審判官)が、各相続人の主張や提出された資料、これまでの経緯など、一切の事情を考慮した上で、法律に基づいて「このように遺産を分けるべき」という最終的な判断(審判)を下す手続きです。
審判で下された決定には法的な強制力があり、相続人はその内容に従わなければなりません。この段階では、自分の希望を伝えるだけでなく、法的に説得力のある主張と、それを裏付ける証拠の提出が極めて重要になります。
遺産分割協議書を作成する際の3つの重要注意点
無事に協議がまとまり、いざ遺産分割協議書を作成する段階。ここで気を抜いてはいけません。書類に不備があると、せっかくの合意が無駄になり、法務局や金融機関での手続きがストップしてしまう恐れがあります。重要なポイントを3つご紹介します。

注意点1:財産は正確に、特定できるように記載する
遺産分割協議書に記載する財産は、「誰が見ても、どの財産のことか一つに特定できる」レベルで正確に書く必要があります。
- 不動産の場合:普段使っている住所(住居表示)ではなく、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている通りに、「所在」「地番」「地目」「地積」、「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」などを正確に転記します。固定資産税の納税通知書の記載だけでは不十分な場合が多く、注意が必要です。
- 預貯金の場合:「〇〇銀行の預金」といった曖昧な書き方ではNGです。「〇〇銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567」のように、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号を可能な限り正確に記載したほうが無難です。
注意点2:相続人全員が署名し「実印」で押印する
遺産分割協議書の末尾には、相続人全員が合意した証として、各自が署名し、「実印」で押印します。
実印とは、市区町村に登録した印鑑のことで、印鑑登録証明書に示されている印影の印鑑のことです。手続先や手続内容によって求められる印鑑・書類は異なりますが、遺産分割協議書を用いる手続では、実印での押印や印鑑登録証明書の提出を求められることが一般的です。
そして、押印した印鑑が本物の実印であることを証明するために、全員分の「印鑑登録証明書」を添付する必要があります。これは、本人が自分の意思で合意したことを公的に証明するための、非常に重要なプロセスです。遺産分割協議書への署名押印は、書類の法的効力を担保する要となります。
注意点3:後から見つかった財産の扱いを決めておく
どんなに念入りに財産調査を行っても、後から故人の通帳や、誰も知らなかった株式などが見つかるケースは意外と少なくありません。そうした場合に備え、遺産分割協議書に次のような一文を加えておくことをお勧めします。
もし、新たに見つかった財産について、改めて相続人全員で別途協議したいのであれば、
「本協議書に記載のない遺産が後日発見された場合は、その分割について相続人全員で別途協議する。」
一方、新たに見つかった財産については、相続人の一人(例えば長男)に相続させるということにしたい場合は、
「本協議書に記載のない遺産が後日発見された場合は、その遺産は〇〇(長男の氏名)が相続する。」
なお「別途協議をする」とした場合、再度の遺産分割協議となるため、その時点で認知症等で遺産分割ができない人がいた場合は、スムーズに遺産分割協議及びその後の手続きができない可能性があります。一方で、「〇〇が相続する」とした場合は、別途遺産分割協議をすることなく、「〇〇」(例えば長男)が相続することができます。
どのような文例を選択するかは、相続人間の関係性や財産状況によりますが、新たな財産が見つかるたびに協議をやり直し、再び書類を作成する手間を省き、将来の紛争を未然に防ぐことができます。
遺産分割協議に関するよくあるご質問
最後に、遺産分割協議に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 借金などのマイナスの財産はどうなりますか?
A. 借金の扱いについて遺産分割協議書に記載することはできますが、債権者の同意がない限り、原則として法定相続分に応じて各相続人が引き継ぐことになります。
例えば、「長男がすべての借金を引き継ぐ」と遺産分割協議に記載することはできますが、それはあくまでも相続人間の内部的な取り決めを記載したに過ぎません。
貸主(債権者)は、他の相続人に対して法定相続分の割合で返済を求めることができます。
もし債権者に対しても遺産分割協議の内容に沿った対応をお願いしたい場合は、債権者自身の同意を得る必要があります。
なお、借金が多い場合は、財産も借金も一切引き継がない相続放棄という手続きも検討する必要があります。
Q. 専門家に相談するタイミングはいつが良いですか?
A. 「少しでも不安を感じた時」が最適なタイミングです。
具体的には、以下のような状況が考えられます。
- 相続人間の関係が良くなく、揉めそうだと感じた時
- 相続財産の種類が多く、調査や評価が複雑な時
- 相続人の中に連絡が取れない人や、判断能力が不十分な人がいる時
- 平日は仕事で忙しく、手続きを進める時間がない時
問題が複雑化・深刻化する前に相談することで、時間的・精神的な負担を大きく減らし、スムーズな解決につながる可能性が高まります。遺産分割協議は、相続手続きの中でも特に専門的な知識と経験が求められる場面です。少しでもご不安があれば、お気軽にご相談ください。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
相続の財産調査で使う「公図」とは?取得方法と注意点を解説
相続不動産の財産調査、見落としを防ぐアイテム、それが「公図」です
ご親族が亡くなられ、相続の手続きを進める中で、特に頭を悩ませるのが不動産の財産調査ではないでしょうか。「把握している不動産はこれだけのはずだけど、万が一見落としがあったらどうしよう…」そんな不安を抱えていらっしゃる方も少なくありません。
実は、その不安を解消し、正確な財産調査を行うための重要な手がかりのひとつとなるのが「公図(こうず)」という書類です。多くの方にとって聞き慣れない言葉かもしれませんが、この公図を読み解くことで、故人が所有していた不動産の全体像を正確に把握し、後の遺産分割協議や相続登記をスムーズに進めることができます。
この記事では、相続財産調査における公図の役割から、具体的な取得方法、そして取得後のチェックポイントまで、初めての方にも分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、公図についての疑問が解消され、自信を持って財産調査の第一歩を踏み出せるはずです。
相続財産調査で「公図」がなぜ重要なのか?
では、なぜ相続財産調査で公図がそれほど重要なのでしょうか。ひと言でいえば、「故人が所有していた不動産の全体像を明らかにし、財産の見落としを防ぐため」です。
公図とは、法務局(登記所)に備え付けられている、土地の区画(筆)や地番を一覧できる地図のようなものです。土地のおおまかな形状や隣接地との位置関係が示されており、不動産調査の基礎資料となります。
登記事項証明書だけでは分からない土地の全体像
相続不動産の調査というと、多くの方がまず「登記事項証明書(登記簿謄本)」を思い浮かべるかもしれません。もちろん、個々の不動産の所有者や権利関係を確認するために、登記事項証明書の取得は不可欠です。
しかし、登記事項証明書は、あくまで私たちが「存在を知っている不動産」についてしか取得することができません。例えば、ご自宅の敷地とは別に、把握していなかった私道の一部や、過去に分筆(分割)された小さな土地などを所有していた場合、それらの存在に気づかず、調査から漏れてしまう可能性があります。
実際に、相続のご相談をお受けしていると、このようなケースは決して珍しくありません。ご自身が把握している土地の登記事項証明書に記載された面積(地積)が想定より小さいなどの場合は、もしかしたら土地が分筆されている可能性も考えられます。
そこで役立つのが公図です。公図を取得すれば、調査したい土地とその周辺の土地がどのように区切られているかが一目でわかります。もし、把握していなかった土地が見つかれば、その地番をもとに新たに登記事項証明書を取得し、所有者を確認することで、財産の見落としを防ぐことができるのです。

公図の種類:「14条地図」と「地図に準ずる図面」
一口に公図といっても、実はその精度によって2つの種類に分けられます。
- 14条地図(不動産登記法第14条第1項に定める地図):
測量に基づいて作成され、一定の精度が確保されているため、現地での位置関係を把握しやすいのが特徴です。 - 地図に準ずる図面(旧公図):
主に明治時代の地租改正事業で作成された図面(旧土地台帳附属地図)を基にしています。そのため、測量技術が未熟だった時代のものも多く、実際の土地の形状や面積、境界線と一致しないこともあります。
現在、全国の登記所では、この「地図に準ずる図面」から精度の高い「14条地図」への置き換え作業が進められていますが、まだ多くの地域では「地図に準ずる図面」が使われています。取得した公図の右下あたりに「地図に準ずる図面」といった記載があるかどうかで、どちらの種類かを確認できます。情報が必ずしも現況と一致しない可能性があることは、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。とはいえ、相続財産を把握する上では、どちらの図面も大きな差はないと思って問題ありません。
公図の取得方法|3つのステップで解説
公図の取得は、決して難しい手続きではありません。以下の3つのステップに沿って進めれば、どなたでも取得することができます。
ステップ1:土地の「地番」を調べる
公図を取得するために、まず必要になるのが土地の「地番(ちばん)」です。私たちが普段使っている住所(住居表示)とは異なる、土地を特定するための番号なので注意が必要です。
地番を調べる最も簡単な方法は、故人宛に届いていた固定資産税の納税通知書を確認することです。通常、「課税明細書」の欄に不動産の所在地として地番が記載されています。また、権利証(登記済証)や登記識別情報通知にも記載されていますので、お手元にあれば確認してみましょう。
ステップ2:取得場所を選ぶ(登記所かインターネット)
地番がわかったら、次にどこで取得するかを決めます。主な取得方法は、法務局(登記所)の窓口で直接請求する方法と、インターネットを利用する方法の2つです。
| 取得方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 法務局(登記所)の窓口 | ・不明点を職員に質問できる・他の書類もまとめて取得できる | ・開庁時間内に行く必要がある・手数料が若干高い |
| インターネット(登記情報提供サービス) | ・自宅のPCから利用時間内に利用可能・手数料が安い・すぐに内容を確認できる | ・操作に慣れが必要な場合がある |
ステップ3:必要書類を準備して請求する
【登記所の窓口で請求する場合】
登記所に備え付けの「地図・図面証明書交付申請書」に必要事項を記入します。申請書に地番を記入し、「地図・図面証明書」の欄で「公図の写し」にチェックを入れて窓口に提出します。手数料は1通500円で、収入印紙で納付します。公図は、相続人であるかどうかに関わらず、誰でも取得することが可能です。
【インターネットで請求する場合】
「登記情報提供サービス」のウェブサイトで利用者登録(一時利用も可能)を行い、画面の案内に従って地番を入力して請求します。手数料は1通361円で、クレジットカードなどで決済します。PDF形式でダウンロードできるので、すぐに内容を確認できます。
【習志野市・八千代市】公図を取得できる登記所のご案内
習志野市や八千代市に相続不動産がある場合、どこで公図を取得すればよいのでしょうか。具体的な登記所をご案内します。
習志野市・八千代市の不動産は千葉地方法務局へ
習志野市にある不動産は千葉地方法務局(本局)、八千代市にある不動産は千葉地方法務局 船橋支局が管轄しています。
- 名称:千葉地方法務局(本局)
- 所在地:〒260-8518 千葉市中央区中央港1丁目11番3号
公図の写しは、管轄外の登記所でも請求できる場合があるため、必ずしも管轄の登記所へ行く必要がないこともあります。お近くの法務局(支局・出張所)の窓口でも、習志野市・八千代市の公図を取得することが可能です。ただし、公図や登記簿謄本を取得したあとの疑問点について、管轄の登記所でないと回答等ができない場合もありますので、可能であれば管轄の登記所での取得をお勧めします。
どの登記所がどこを管轄しているかについては、法務局のウェブサイトで確認することができます。
参照:千葉地方法務局 不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧
オンラインでの取得も可能です
もちろん、登記所へ足を運ばなくても、前述の「登記情報提供サービス」を利用すれば、習志野市や八千代市の公図をオンラインで取得することができます。
ただし、正直なところ、このインターネットサービスは初めて利用する方にとっては、必ずしも使い勝手が良いとは言えない側面もあります。もし操作に不安があったり、他の書類も合わせて調査したりしたい場合は、少しお手間かもしれませんが、登記所の窓口へ行って職員の方に聞きながら取得する方が確実で安心かもしれません。
公図を取得した後のチェックポイントと注意点
無事に公図を取得できたら、次は内容を確認していきましょう。ただ眺めるだけでなく、以下のポイントに注意してチェックすることで、より深い情報が見えてきます。

公図と現況が異なる場合は専門家への相談も検討
特に「地図に準ずる図面」の場合、公図に描かれている土地の形状や境界線が、実際の土地の状況と明らかに異なっていることがあります。「図面と実際のブロック塀の位置が違う」「お隣との境界線が曖昧になっている」といったケースです。
このような境界に関する問題は、相続手続きの中でも特に専門的な知識を要する分野です。当事者同士での話し合いでは解決が難しく、将来的なトラブルの原因にもなりかねません。もし公図と現況のズレに気づき、不安を感じた場合は、ご自身だけで抱え込まず、土地家屋調査士や私たちのような相続の専門家へ一度相談してみることをお勧めします。
まとめ|公図を活用して、正確な相続財産調査を
今回は、相続財産調査における「公図」の重要性や取得方法、チェックポイントについて解説しました。
- 公図は、登記事項証明書だけでは分からない不動産の全体像を把握し、財産の見落としを防ぐために不可欠な書類です。
- 取得は、法務局(登記所)の窓口か、インターネットの「登記情報提供サービス」で可能です。
- 習志野市・八千代市の不動産は、千葉地方法務局が管轄していますが、全国どこの登記所でも取得できます。
- 取得後は、地番のない土地がないか、現況と大きなズレがないかなどを確認しましょう。
相続手続きは、やらなければならないことが多く、大変な作業です。しかし、最初のステップである財産調査を正確に行うことが、後の遺産分割協議や相続登記を円滑に進めるための土台となります。この記事が、皆さまの相続手続きの一助となれば幸いです。
不動産の相続手続きでお困りならご相談ください
「公図を取ってみたけれど、見方がよく分からない」「知らない土地が出てきて、どう調査を進めればいいか不安…」など、不動産の相続手続きで何かお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
相続に関するお悩みは、ご家庭によって様々です。私たちは、お一人おひとりの状況を丁寧にお伺いし、何をすべきかを分かりやすくご説明します。初回のご相談は無料です(ご相談内容によっては、別途費用が発生する場合があります)ので、安心してご連絡いただければと思います。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
相続登記の不動産評価額はどこで調べる?必要書類と取得方法
相続登記で不動産の評価額が必要なのはなぜ?
ご家族が亡くなられ、不動産の名義変更(相続登記)の手続きを進めようとすると、「不動産の評価額」という言葉を目にすることがあるかもしれません。「なぜ、不動産の評価額を調べる必要があるのだろう?」と疑問に思う方も少なくないでしょう。
その理由は、相続登記を法務局に申請する際に「登録免許税」という税金を納める必要があるからです。この登録免許税の金額は、相続する不動産の評価額を基に計算されます。
つまり、登録免許税の正確な金額を算出するために、その計算の基礎となる不動産の評価額を証明する書類が必要になるのです。
多くの方がつまずきやすいのが、「どの書類で」「いつの時点の」評価額を調べればよいのか、という点です。この記事では、その具体的な方法を分かりやすく解説していきますので、ご安心ください。
相続登記で使う不動産評価額の調べ方【2つの方法】
相続登記の登録免許税を計算する際に使用するのは、「固定資産税評価額」です。これは、市町村が固定資産税を計算するために定めている評価額のことで、一般的に3年に1度見直されます。
この固定資産税評価額を調べる方法は、主に2つあります。まずは手軽な方法から確認してみましょう。

方法1:固定資産税の「課税明細書」で確認する
最も簡単で費用もかからないのが、この方法です。固定資産税の「課税明細書」は、毎年4月〜5月頃に市町村から送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に同封されています。
まずは、亡くなられた方宛てに届いた郵便物の中に、この納税通知書がないか探してみてください。
課税明細書が見つかったら、不動産(土地・家屋)の所在などが記載された項目の中にある「価格」または「評価額」という欄を確認します。この金額が、固定資産税評価額にあたります。
方法2:「固定資産評価証明書」を取得する
「納税通知書や課税明細書が見つからない」「相続財産に非課税の私道が含まれている」といった場合には、市区町村の役所で「固定資産評価証明書」を取得します。
これは、不動産の評価額を公的に証明する書類です。相続登記を行う場合、登記申請書に固定資産の価格(課税価格)を記載する必要がありますが、評価証明書の添付が必須ではない場合もあります。取得方法の詳細は、後ほど詳しくご説明します。
【重要】いつの評価額が必要?登記申請年度の証明書を用意
ここが、相続登記で最も注意すべき重要なポイントです。登録免許税の計算に使う固定資産税評価額は、「相続が発生した日」のものではありません。
法務局に相続登記を申請する「年度」の評価額が必要になります。
固定資産税は賦課期日(原則1月1日)を基準に課税関係が決まりますが、実務上「○年度」の証明書は4月1日から翌年の3月31日までの年度区分で取り扱われることが一般的です。この「4月1日」をまたぐかどうかで、必要となる証明書の年度が変わるため、十分な注意が必要です。

- 例1:2026年(令和8年)3月31日に登記申請する場合
→ 2025年度(令和7年度)の固定資産評価証明書が必要 - 例2:2026年(令和8年)4月1日に登記申請する場合
→ 2026年度(令和8年度)の固定資産評価証明書が必要
新しい年度の固定資産評価証明書は、原則としてその年の4月1日から取得可能になります。登記申請のタイミングをよく確認し、正しい年度の書類を準備するようにしましょう。
習志野市・八千代市での固定資産評価証明書の取得方法
ここでは、習志野市と八千代市で固定資産評価証明書を取得する際の具体的な手続きについてご案内します。
習志野市で取得する場合
習志野市では、市役所の窓口で証明書を取得できます。相続人が申請する際には、亡くなられた方との関係が分かる書類が必要になります。
| 申請窓口 | ・市役所 資産税課(市庁舎GF階/グラウンドフロア)・各支所、連絡所 |
|---|---|
| 必要なもの | ・窓口に来る方の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)・手数料(1通300円)・(相続人の場合)被相続人の死亡の事実と、申請者が相続人であることが分かる戸籍謄本など |
| 備考 | 郵送での請求も可能です。事前に市役所に必要書類を確認するとスムーズです。 |
八千代市で取得する場合
八千代市でも同様に、市役所の窓口で証明書を取得できます。必要書類を事前に準備して窓口へ向かいましょう。なお、各支所・連絡所でも受け付けはできますが、即日交付は市役所のみです。
| 申請窓口 | ・市役所 資産税課(2階)・各支所、連絡所 |
|---|---|
| 必要なもの | ・窓口に来る方の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)・手数料(1枚300円)・(相続人の場合)被相続人の死亡の事実と、申請者が相続人であることが分かる戸籍謄本など |
| 備考 | 郵送請求も可能です。詳細は市のホームページで確認できます。 |
より詳しい情報については、八千代市の公式ウェブサイトもご参照ください。
手続きが難しいと感じたら、一人で悩まずご相談ください
ここまで、相続登記に必要な不動産評価額の調べ方について解説してきましたが、「やはり手続きが複雑で難しそうだ」「戸籍謄本などを集める時間がない」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
相続手続きは、評価額の調査だけでなく、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成など、多くの時間と手間がかかります。もし少しでもご不安な点や不明な点がございましたら、一人で抱え込まず、ぜひ司法書士和久咲法務事務所へお気軽にお問い合わせください。
皆様の心のつかえが取れるよう、丁寧にお手伝いさせていただきます。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
相続登記をしないと何か問題がありますか?
「相続登記をしないと何か問題がありますか?」
これは、相続登記のご相談の際に多くの方から質問される事項の一つです。
そこで、今回は相続登記に関してよくご質問を受ける事項をいくつかご紹介します。
その①:相続登記をしないと問題がありますか?
答え:あります。
被相続人(亡くなった方)の不動産を売却や贈与をしたい場合、被相続人の名義のまま行うことはできません。
同じく、不動産を担保にローンを組んだりすることも、被相続人の名義のまま行うことはできません。
被相続人名義の不動産を売却などしたい場合は、必ず相続登記をする必要があります。
現時点では、売却することもローンを組むこともないといっても、将来的には可能性があるかもしれません。
その時に、いざ、相続登記を行おうと思っても、相続人の中にも相続が発生していることもあり、相続関係・相続手続が複雑化していることも多いです。
そうなると、結局は売却等をしたくても出来ない不動産となってしまいます。
相続登記を行わない場合、登記簿上の名義はいつまでも被相続人(亡くなった方)の名義のままです。国が勝手に名義を書き換えるなどという制度はありません。
そのため、速やかな相続登記が望ましいとされています。
加えて、2024年(令和6年)4月から、相続登記が義務化されており「相続開始を知った日から3年以内」に相続登記をすることが義務とされ、それを怠った場合は10万円以下の過料(ペナルティーのようなもの)の対象となる可能性があります。
その相続登記の義務化の点からも、速やかな相続登記をお勧めします。
その②:相続登記は自分でできますか?
答え:できます。
これもよくご質問される事項で、結論としては、ご自身ですることももちろん可能です。
ただ、「登記簿の名義を書き換えるだけだから、役所に行って書類を提出すればいいんだろ?」という程度のお考えで着手してしまうと、そのイメージとのギャップに驚かれることもあるかもしれません。
例えば、引っ越しをされて住民票の変更をするために役所で手続をする場合は、役所の窓口で用意されている転入届に記入して、これまで住んでいた市町村で取得した転出届とともに提出すれば終わります。
一方、相続登記はご自身ですることも出来ますが、そこまでシンプルな手続ではありません。
まず、大きな違いは、役所に行く前にご事情に沿った書類を準備しなければなりません。
例えば、遺産分割協議が行われたのであれば遺産分割協議書、遺言があれば遺言書、その遺言書が公証役場で作成されたものでなければ家庭裁判所での検認手続を行った遺言書、相続人を確認するための被相続人の一生分の戸籍、などなど。
ご自身の事情にあった書類を準備する必要があります。
そして、登記の申請書を作成します。
ひな型は法務局のホームページや窓口に用意されていますが、記載方法が独特であったり、申請書に収入印紙を貼って登録免許税という税金を納付する必要もあります。
それらの準備が整ったら管轄の法務局に提出するのですが、提出したら終わりではなく、登記が完了したら法務局から交付される書類を受け取る必要があります。
登記完了後に振り返ってみると、割とシンプルな手続だったな、と思える方もいるかもしれません。
しかし、手続作業中は疑問の連続となり、法務局への問い合わせたり、ホームページや書籍でいろいろ調べることも多いと思われます。
まずは、ご自身でチャレンジをしてみて、なんだか大変そうだな、面倒そうだなと思われたら司法書士に依頼することを検討されてもよろしいかと思います。
その③:遠方の不動産なのですが手続をお願いできますか?
答え:不動産が遠方であっても、ご依頼いただく相続人の方が千葉県近郊にお住まいの場合は、ご依頼を承っております。
例えば、沖縄県や北海道の実家の相続を考えてみます。
実家の登記名義人である父が亡くなり相続登記をする必要が生じました。
しかし、相続人である子どもたちは、全員、実家を離れ千葉や東京、大阪にいます。
そのような状況なのですが、相続登記をお願いすることはできますか?といったお問い合わせが多いです。
相続登記の手続は戸籍謄本や遺産分割協議書といった書類上の手続が中心となります。
そのため、対象不動産が当事務所(千葉県習志野市)より遠方であっても、手続をすることは可能です。
ただし、現地の調査が必要であったり、相続人の方と直接面会等が必要な場合もあります。
そのような場合は、あらかじめお伝えをさせていただいております。
今回は以上となりますが、また機会を改めてご紹介をさせていただきます。
相続登記についてのご相談
相続登記についてはお気軽にお問い合わせください。
事前にご予約をいただければ土日・夜間でもご相談を承っております。
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当事務所・代表司法書士の執筆(本文)書籍
「相続登記サクッと準備ガイド」(中央経済社)


千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
共有の農地を単独所有にしたい
当事務所の周辺は住宅地であるため、田んぼや畑といった農地は多いとは言えません。(もちろん東京の都市部などと比べればありますが。。)
ところで、司法書士の中心業務の一つに不動産登記があります。
不動産登記とは、ざっくり言えば「不動産の名義変更」の手続です。
Aさんが所有している土地をBさんに売ったら、登記簿をAさんからBさんに名義を書き換えます。
これが不動産登記です。
売買の対象の土地が住宅地の場合、AさんとBさんの売買契約によって売ることができます。
当たり前と言えば当たり前かもしれません。
しかし、世の中にはこの当たり前が通用しない土地が存在します。
それが、「田」や「畑」といった農地です。
なぜ、農地は世の中の当たり前が通用しないのでしょうか?
それは、農地法という特別な法律があるからです。
農地法は、ざっくり言えば、農地を守りましょうという法律です。
むやみに農地を住宅地などに開発してしまうと、日本から農地が無くなってしまうかもしれません。
そのようなことにならないように、農地の売却にはお役所の許可が必要になっています。
たとえ、AさんとBさんの売買契約が成立していたとしても、お役所の許可がなければ、売買はできません。
このお役所の許可のことを「農地法の許可」などと呼んでいます。
さて、ここからが今回の本題なのですが、相続などにより取得した土地を共有者のうちの一人に贈与したいという相談がありました。
その土地の登記簿を確認するとA・B・Cの3名の共有状態でした。
この3名は親戚同士で、対象となる土地は現在使われていないので、B・Cの持分をAさんに贈与してAさんの単独所有にしたいという相談でした。
贈与であっても、売買と同様に、贈与契約があれば、B・Cの持分をAさんに贈与することができます。
ただし、当事務所で登記簿を確認してみると、今回の土地は「田んぼ」でした。
そうです。
当たり前が通用しない農地でした。
つまり、B・CとAさんの贈与契約だけではダメで、農地法の許可が必要となるケースでした。
じゃ、許可を取ればいいのでは?と思いますが、
ケースにもよるのですが、今回は農地法の許可を取得することが大変難しい土地でした。
そこで、農地法の許可はあきらめて別の方法を検討しました。
それが「持分放棄」です。
「放棄」とは言いますが、実は、不動産は原則として捨てること・放棄することはできません。
買った土地をもう使わないので、捨てます・放棄します、ということは出来ず、誰かにあげたり(贈与したり)、売ったりすることが出来なければ、ずっと所有者のままです。
※相続により取得した場合、一定の要件を満たす土地は、国が引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)ができました。詳細は別の機会にしたいと思います。
ただし、それが不動産の「持分」であった場合は、事情が異なりなります。
今回のケースのように、共有であった場合は、その持分を放棄することができます。
持分を放棄すると、放棄をしていない共有者に持分が移動します。
今回の場合は、B・Cが持分を放棄することで、その持分がAに移動します。
そして、結果的にAが単独で所有することができ、目的を達成することができます。
あれ?
農地法はどこにいったのでしょうか?
実は、この持分放棄では農地法の許可は不要です。
似たようなことを行っているのに、贈与では必要で、持分放棄では不要・・。
なんだか不思議です。
すこしだけ理屈をお話すれば、売買や贈与は契約です。
契約とはAとB・Cの合意とも言えます。
お役所は、農地法の許可を使って、この合意に「ちょっと待ったー」をすることができるのです。
ちょっと待ったーによって合意をさせない、つまり売買や贈与は出来ないという理屈です。
一方、「放棄」はB・Cが「捨てる」行為であって、AとB・Cの合意ではありません。
農地法では「放棄(捨てる)」という行為に、「ちょっと待ったー」はできません。
そのため、「持分を放棄する」と言えば、農地であっても持分の放棄をすることができます。
そのため、今回の相談では、贈与ではなく、持分放棄をすることで、Aの単独所有とすることが出来ました。

千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
登記はすぐに終わりません。
2024年4月より相続登記が義務化されました。
2024年4月以降に生じた相続はもちろん、それまでに生じていた相続も義務化の対象となっています。そのためでしょうか。最近、法務局(登記所)が混雑しているように感じます。
とはいえ、実際に法務局に行っても人であふれかえっているということはありません。
それは、登記申請や登記事項証明書(登記簿謄本)の申請がオンラインや郵送で行われていることが多く、実際に法務局の窓口に行って申請などを行っている人が少ないからだと思われます。
では、どこで法務局の混雑具合を感じるのか?
それは、登記申請から登記完了までの期間です。
登記(相続登記などの不動産登記)とは、簡単に言えば、登記簿の書き換えのことです。
相続登記でいえば、不動産の所有者が亡くなり相続が生じたので、登記簿に記載されている所有者の名義を書き換えてほしい、というものです。
この登記=書き換え作業って、実は、わりと時間がかかります。引っ越しをしたときは市役所などで住所変更の手続きをしますが、その際の書き換えは多くの場合、即日に行ってもらえると思います。しかし、登記は事情がことなります。
早くても1週間、時間がかかる場合は1か月以上のこともあり得ます。
法務局は管轄といって、担当エリアが決まっています。大都市と地方の法務局では当然取り扱い量が異なります。
私が日ごろ申請することが多い法務局はおおむね10日~2週間程度のことが多いです。1週間くらいだと早いなーと感じます。
ところが、最近は1か月近くかかることも珍しくない感じがします。
理由はよくわかりませんが、相続登記の義務化が一因になっているような気もします。
いずれにしても、登記には時間がかかるということは気に留めておかれるとよいと思います。
例えば、相続登記とはいっても、不動産の売却を前提としたものもあります。
父が亡くなった後、自宅の不動産を売却しようと思ったら、父名義のままだったので、売却するために父から子への相続登記が必要であったような場合です。
この場合、売却までに相続登記を必ず終わらせておく必要があります。
ところが、あまりにタイトなスケジュールを組んでしまうと、相続登記が間に合わないということもあり得ます。
と、言うのも、先の1か月ほどかかっているというのは、あくまでも登記申請から登記完了までの期間です。
相続登記の申請をするには、その前に戸籍謄本などのいろいろな書類を準備しなければなりません。ケースによりますが、事前準備に最低1か月程度、スムーズにいっても2~3か月かかることが多いです。相続人間にトラブルなどがあれば、以上かかります。
不動産の売却をするときなどは、相続登記の目途が付いてから動くことも多いかと思いますが、登記期間が長めになっていることは留意点の一つかと思います。
「登記はすぐに終わらない」
これはぜひ覚えておいてください。
<ご案内>
当事務所・代表司法書士の執筆(本文)書籍
「相続登記サクッと準備ガイド」(中央経済社)


千葉県習志野市東習志野にある「司法書士和久咲法務事務所」は、相続手続や遺言書作成など、相続や終活に関するご相談を専門に承っております。代表司法書士の景山悟は、平成29年の開業以来、200件以上の相続手続や20名以上の成年後見人業務に携わり、地域の皆様のお力になれるよう日々努めております。初回相談は無料ですので、相続や遺言、成年後見などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
「登記識別情報の通知を希望しません」にチェックはしない
司法書士は不動産取引の残金決済に立ち会うことがよくあります。そこでは登記書類などを確認して間違いなく所有権が移転したり、抵当権が設定出来たりすることを確認しています。
以前、残金決済にあたって担当の不動産仲介業者から「今回の売主さんは登記識別情報を持っていないようです。」との連絡がありました。「登記識別情報」とは従来の権利証と同じ役割を果たす書類です。不動産の購入や相続などで不動産の名義を取得した際に登記所(法務局)から通知(交付)されている書類で、後日、不動産の売却の際に必要になります。登記識別情報は無くても手続はできますが、別途の手続と費用がかかります。費用はおおむね5~10万円程度かかります。
このように登記識別情報は重要な書類ではあるのですが、不動産は長期に所有することも多いので、中には無くしてしまう方もいます。ただ、探すのが面倒だと思われている方もいるようで、「費用がかかります」と案内すると、出てくることもしばしばです。ちなみに、登記識別情報(従来の権利証も)は再発行はできません。
冒頭の仲介業者から問い合わせがあった売主さんにも同様の案内をしようと思っていたところ、仲介業者から「この前登記をしたばかりのようなんです」との連絡も。
登記簿謄本を確認してみると、確かに2か月くらい前に登記をしたばかりのようで、登記識別情報を無くしてしまうには早すぎます。そこでもう少し登記簿謄本を見てみると、取得原因(理由)に「相続」と書いてありました。
それでピンときました(これは売主さんが自分で登記手続きをしたのかな??)。
仲介業者に「今回の売主さんは、相続登記で不動産を取得しているみたいですけど、これは誰が行ったんですか?」と聞いてみると「司法書士ではなく、自分でやったようです」との回答がありました。
予想的中です。
おそらく、法務局の登記申請書のひな形を使用しながら相続登記をご自身で行ったのだと思います。
法務局が用意しているひな形の中には、四角のチェックボックスとともに「登記識別情報の通知を希望しません」という欄があります。
そして、今回の売主さんは、このチェックボックスにチェックを入れて相続登記を申請したのだと思います。
「すぐに売っちゃうのだから登記識別情報なんかいらないな」などと思われたのかもしれません。
ただ、その登記識別情報は、そのすぐ売っちゃう際に使用するものなので、少なくとも今回はチェックボックスにチェックをすべきではありませんでした。
この売主さんに限らず、登記識別情報は、現在のところよほどの事情がない限り通知(交付)してもらうことが一般的です。確かに通知後の保管などが面倒なところもありますが、ご自身で相続登記を行う際は、チェックボックスにチェックを入れずに登記識別情報を通知(交付)されることを強くお勧めします。
ちなみに、さきほどの売主さんは結局登記識別情報が無かったため、別途5万円の費用がかかりました。
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当事務所・代表司法書士の執筆(本文)書籍
「相続登記サクッと準備ガイド」(中央経済社)


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