Archive for the ‘登記一般’ Category

相続登記をしないと何か問題がありますか?

2025-06-25

「相続登記をしないと何か問題がありますか?」
これは、相続登記のご相談の際に多くの方から質問される事項の一つです。
そこで、今回は相続登記に関してよくご質問を受ける事項をいくつかご紹介します。

その①:相続登記をしないと問題がありますか?

答え:あります。

被相続人(亡くなった方)の不動産を売却や贈与をしたい場合、被相続人の名義のまま行うことはできません。
同じく、不動産を担保にローンを組んだりすることも、被相続人の名義のまま行うことはできません。

被相続人名義の不動産を売却などしたい場合は、必ず相続登記をする必要があります。

現時点では、売却することもローンを組むこともないといっても、将来的には可能性があるかもしれません。
その時に、いざ、相続登記を行おうと思っても、相続人の中にも相続が発生していることもあり、相続関係・相続手続が複雑化していることも多いです。
そうなると、結局は売却等をしたくても出来ない不動産となってしまいます。

相続登記を行わない場合、登記簿上の名義はいつまでも被相続人(亡くなった方)の名義のままです。国が勝手に名義を書き換えるなどという制度はありません。

そのため、速やかな相続登記が望ましいとされています。

加えて、2024年(令和6年)4月から、相続登記が義務化されており「相続開始を知った日から3年以内」に相続登記をすることが義務とされ、それを怠った場合は10万円以下の過料(ペナルティーのようなもの)の対象となる可能性があります。
その相続登記の義務化の点からも、速やかな相続登記をお勧めします。

その②:相続登記は自分でできますか?

答え:できます。

これもよくご質問される事項で、結論としては、ご自身ですることももちろん可能です。

ただ、「登記簿の名義を書き換えるだけだから、役所に行って書類を提出すればいいんだろ?」という程度のお考えで着手してしまうと、そのイメージとのギャップに驚かれることもあるかもしれません。

例えば、引っ越しをされて住民票の変更をするために役所で手続をする場合は、役所の窓口で用意されている転入届に記入して、これまで住んでいた市町村で取得した転出届とともに提出すれば終わります。

一方、相続登記はご自身ですることも出来ますが、そこまでシンプルな手続ではありません。
まず、大きな違いは、役所に行く前にご事情に沿った書類を準備しなければなりません。

例えば、遺産分割協議が行われたのであれば遺産分割協議書、遺言があれば遺言書、その遺言書が公証役場で作成されたものでなければ家庭裁判所での検認手続を行った遺言書、相続人を確認するための被相続人の一生分の戸籍、などなど。

ご自身の事情にあった書類を準備する必要があります。

そして、登記の申請書を作成します。
ひな型は法務局のホームページや窓口に用意されていますが、記載方法が独特であったり、申請書に収入印紙を貼って登録免許税という税金を納付する必要もあります。

それらの準備が整ったら管轄の法務局に提出するのですが、提出したら終わりではなく、登記が完了したら法務局から交付される書類を受け取る必要があります。

登記完了後に振り返ってみると、割とシンプルな手続だったな、と思える方もいるかもしれません。
しかし、手続作業中は疑問の連続となり、法務局への問い合わせたり、ホームページや書籍でいろいろ調べることも多いと思われます。

まずは、ご自身でチャレンジをしてみて、なんだか大変そうだな、面倒そうだなと思われたら司法書士に依頼することを検討されてもよろしいかと思います。

その③:遠方の不動産なのですが手続をお願いできますか?

答え:不動産が遠方であっても、ご依頼いただく相続人の方が千葉県近郊にお住まいの場合は、ご依頼を承っております。

例えば、沖縄県や北海道の実家の相続を考えてみます。
実家の登記名義人である父が亡くなり相続登記をする必要が生じました。
しかし、相続人である子どもたちは、全員、実家を離れ千葉や東京、大阪にいます。
そのような状況なのですが、相続登記をお願いすることはできますか?といったお問い合わせが多いです。

相続登記の手続は戸籍謄本や遺産分割協議書といった書類上の手続が中心となります。
そのため、対象不動産が当事務所(千葉県習志野市)より遠方であっても、手続をすることは可能です。
ただし、現地の調査が必要であったり、相続人の方と直接面会等が必要な場合もあります。
そのような場合は、あらかじめお伝えをさせていただいております。

今回は以上となりますが、また機会を改めてご紹介をさせていただきます。

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事前にご予約をいただければ土日・夜間でもご相談を承っております。

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共有の農地を単独所有にしたい

2024-07-10

当事務所の周辺は住宅地であるため、田んぼや畑といった農地は多いとは言えません。(もちろん東京の都市部などと比べればありますが。。)

ところで、司法書士の中心業務の一つに不動産登記があります。
不動産登記とは、ざっくり言えば「不動産の名義変更」の手続です。
Aさんが所有している土地をBさんに売ったら、登記簿をAさんからBさんに名義を書き換えます。
これが不動産登記です。
売買の対象の土地が住宅地の場合、AさんとBさんの売買契約によって売ることができます。
当たり前と言えば当たり前かもしれません。

しかし、世の中にはこの当たり前が通用しない土地が存在します。
それが、「田」や「畑」といった農地です。
なぜ、農地は世の中の当たり前が通用しないのでしょうか?

それは、農地法という特別な法律があるからです。

農地法は、ざっくり言えば、農地を守りましょうという法律です。
むやみに農地を住宅地などに開発してしまうと、日本から農地が無くなってしまうかもしれません。
そのようなことにならないように、農地の売却にはお役所の許可が必要になっています。
たとえ、AさんとBさんの売買契約が成立していたとしても、お役所の許可がなければ、売買はできません。

このお役所の許可のことを「農地法の許可」などと呼んでいます。

さて、ここからが今回の本題なのですが、相続などにより取得した土地を共有者のうちの一人に贈与したいという相談がありました。
その土地の登記簿を確認するとA・B・Cの3名の共有状態でした。
この3名は親戚同士で、対象となる土地は現在使われていないので、B・Cの持分をAさんに贈与してAさんの単独所有にしたいという相談でした。

贈与であっても、売買と同様に、贈与契約があれば、B・Cの持分をAさんに贈与することができます。
ただし、当事務所で登記簿を確認してみると、今回の土地は「田んぼ」でした。
そうです。
当たり前が通用しない農地でした。

つまり、B・CとAさんの贈与契約だけではダメで、農地法の許可が必要となるケースでした。

じゃ、許可を取ればいいのでは?と思いますが、
ケースにもよるのですが、今回は農地法の許可を取得することが大変難しい土地でした。

そこで、農地法の許可はあきらめて別の方法を検討しました。

それが「持分放棄」です。

「放棄」とは言いますが、実は、不動産は原則として捨てること・放棄することはできません。
買った土地をもう使わないので、捨てます・放棄します、ということは出来ず、誰かにあげたり(贈与したり)、売ったりすることが出来なければ、ずっと所有者のままです。
※相続により取得した場合、一定の要件を満たす土地は、国が引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)ができました。詳細は別の機会にしたいと思います。

ただし、それが不動産の「持分」であった場合は、事情が異なりなります。
今回のケースのように、共有であった場合は、その持分を放棄することができます。

持分を放棄すると、放棄をしていない共有者に持分が移動します。

今回の場合は、B・Cが持分を放棄することで、その持分がAに移動します。
そして、結果的にAが単独で所有することができ、目的を達成することができます。

あれ?
農地法はどこにいったのでしょうか?

実は、この持分放棄では農地法の許可は不要です。
似たようなことを行っているのに、贈与では必要で、持分放棄では不要・・。
なんだか不思議です。

すこしだけ理屈をお話すれば、売買や贈与は契約です。
契約とはAとB・Cの合意とも言えます。
お役所は、農地法の許可を使って、この合意に「ちょっと待ったー」をすることができるのです。
ちょっと待ったーによって合意をさせない、つまり売買や贈与は出来ないという理屈です。

一方、「放棄」はB・Cが「捨てる」行為であって、AとB・Cの合意ではありません。
農地法では「放棄(捨てる)」という行為に、「ちょっと待ったー」はできません。
そのため、「持分を放棄する」と言えば、農地であっても持分の放棄をすることができます。

そのため、今回の相談では、贈与ではなく、持分放棄をすることで、Aの単独所有とすることが出来ました。

登記はすぐに終わりません。

2024-06-27

2024年4月より相続登記が義務化されました。
2024年4月以降に生じた相続はもちろん、それまでに生じていた相続も義務化の対象となっています。そのためでしょうか。最近、法務局(登記所)が混雑しているように感じます。

とはいえ、実際に法務局に行っても人であふれかえっているということはありません。
それは、登記申請や登記事項証明書(登記簿謄本)の申請がオンラインや郵送で行われていることが多く、実際に法務局の窓口に行って申請などを行っている人が少ないからだと思われます。

では、どこで法務局の混雑具合を感じるのか?
それは、登記申請から登記完了までの期間です。

登記(相続登記などの不動産登記)とは、簡単に言えば、登記簿の書き換えのことです。
相続登記でいえば、不動産の所有者が亡くなり相続が生じたので、登記簿に記載されている所有者の名義を書き換えてほしい、というものです。

この登記=書き換え作業って、実は、わりと時間がかかります。引っ越しをしたときは市役所などで住所変更の手続きをしますが、その際の書き換えは多くの場合、即日に行ってもらえると思います。しかし、登記は事情がことなります。
早くても1週間、時間がかかる場合は1か月以上のこともあり得ます。

法務局は管轄といって、担当エリアが決まっています。大都市と地方の法務局では当然取り扱い量が異なります。
私が日ごろ申請することが多い法務局はおおむね10日~2週間程度のことが多いです。1週間くらいだと早いなーと感じます。
ところが、最近は1か月近くかかることも珍しくない感じがします。
理由はよくわかりませんが、相続登記の義務化が一因になっているような気もします。

いずれにしても、登記には時間がかかるということは気に留めておかれるとよいと思います。

例えば、相続登記とはいっても、不動産の売却を前提としたものもあります。
父が亡くなった後、自宅の不動産を売却しようと思ったら、父名義のままだったので、売却するために父から子への相続登記が必要であったような場合です。

この場合、売却までに相続登記を必ず終わらせておく必要があります。
ところが、あまりにタイトなスケジュールを組んでしまうと、相続登記が間に合わないということもあり得ます。
と、言うのも、先の1か月ほどかかっているというのは、あくまでも登記申請から登記完了までの期間です。

相続登記の申請をするには、その前に戸籍謄本などのいろいろな書類を準備しなければなりません。ケースによりますが、事前準備に最低1か月程度、スムーズにいっても2~3か月かかることが多いです。相続人間にトラブルなどがあれば、以上かかります。

不動産の売却をするときなどは、相続登記の目途が付いてから動くことも多いかと思いますが、登記期間が長めになっていることは留意点の一つかと思います。

「登記はすぐに終わらない」
これはぜひ覚えておいてください。

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「相続登記サクッと準備ガイド」(中央経済社)

「登記識別情報の通知を希望しません」にチェックはしない

2024-06-14

司法書士は不動産取引の残金決済に立ち会うことがよくあります。そこでは登記書類などを確認して間違いなく所有権が移転したり、抵当権が設定出来たりすることを確認しています。

以前、残金決済にあたって担当の不動産仲介業者から「今回の売主さんは登記識別情報を持っていないようです。」との連絡がありました。「登記識別情報」とは従来の権利証と同じ役割を果たす書類です。不動産の購入や相続などで不動産の名義を取得した際に登記所(法務局)から通知(交付)されている書類で、後日、不動産の売却の際に必要になります。登記識別情報は無くても手続はできますが、別途の手続と費用がかかります。費用はおおむね5~10万円程度かかります。

このように登記識別情報は重要な書類ではあるのですが、不動産は長期に所有することも多いので、中には無くしてしまう方もいます。ただ、探すのが面倒だと思われている方もいるようで、「費用がかかります」と案内すると、出てくることもしばしばです。ちなみに、登記識別情報(従来の権利証も)は再発行はできません。

冒頭の仲介業者から問い合わせがあった売主さんにも同様の案内をしようと思っていたところ、仲介業者から「この前登記をしたばかりのようなんです」との連絡も。

登記簿謄本を確認してみると、確かに2か月くらい前に登記をしたばかりのようで、登記識別情報を無くしてしまうには早すぎます。そこでもう少し登記簿謄本を見てみると、取得原因(理由)に「相続」と書いてありました。

それでピンときました(これは売主さんが自分で登記手続きをしたのかな??)。

仲介業者に「今回の売主さんは、相続登記で不動産を取得しているみたいですけど、これは誰が行ったんですか?」と聞いてみると「司法書士ではなく、自分でやったようです」との回答がありました。

予想的中です。

おそらく、法務局の登記申請書のひな形を使用しながら相続登記をご自身で行ったのだと思います。
法務局が用意しているひな形の中には、四角のチェックボックスとともに「登記識別情報の通知を希望しません」という欄があります。

そして、今回の売主さんは、このチェックボックスにチェックを入れて相続登記を申請したのだと思います。
「すぐに売っちゃうのだから登記識別情報なんかいらないな」などと思われたのかもしれません。

ただ、その登記識別情報は、そのすぐ売っちゃう際に使用するものなので、少なくとも今回はチェックボックスにチェックをすべきではありませんでした。

この売主さんに限らず、登記識別情報は、現在のところよほどの事情がない限り通知(交付)してもらうことが一般的です。確かに通知後の保管などが面倒なところもありますが、ご自身で相続登記を行う際は、チェックボックスにチェックを入れずに登記識別情報を通知(交付)されることを強くお勧めします。

ちなみに、さきほどの売主さんは結局登記識別情報が無かったため、別途5万円の費用がかかりました。

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