自宅の賃貸借契約を解除するには家庭裁判所の許可が必要

成年後見人(一定の保佐人・補助人を含む、以下同じ)は、日々、成年被後見人の財産管理を行っており、成年後見人の判断で成年被後見人の財産を売却したりすることができます。
しかし、一定の場合、売却等をするためには家庭裁判所の許可が必要な場合があります。

居住用不動産を処分する場合

成年被後見人が住んでいた不動産を処分する場合は、処分をする前に家庭裁判所の許可が必要になります。
処分の典型例としては「売却」です。
すなわち、成年被後見人名義である自宅を売却したい場合は、成年後見人の権限だけではすることができず、家庭裁判所の許可が必要となります。
その許可を得ずに売却(=不動産の売買契約の締結)をしても、その売却は無効です。
そのため、場合によっては買主に引渡した不動産を返してもらったり、出来ない場合は、損害の補償という話も出てくる可能性があります。

居住用不動産の意味合いは広い

居住用不動産と聞くと「今現在実際に住んでいる自宅」のように思えますが、家庭裁判所の許可が必要となる「居住用不動産」の意味合いはもっと広いです。

次のような場合も居住用不動産に含まれると考えられます。

・現在は施設等に入所しているが、その入所前まで生活していた自宅
・かつて生活していたことがある自宅
・すでに建物(自宅)は取り壊され更地となっている土地

これ以外にも、かつて住民登録した自宅などは「居住用不動産」に含まれる可能性があります。
ただし、許可の要否は家庭裁判所によって判断が分かれることもあるので、事前に問い合わせることをお勧めします。

自宅が賃貸であった場合も許可が必要

居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要であることはご理解いただけたかと思います。
そこで見落としがちなのが「処分」の中身です。
「処分」の代表例は「売却」ですが、売却だけではありません。

「処分」には「賃貸借契約の解除」も含まれています。

例えば、自宅がアパートなどの賃貸物件の場合で、成年被後見人が施設に入所するために自宅アパートの賃貸借契約を解除したいとき、成年後見人の判断だけでは行うことができません。
「賃貸借契約の解除」について家庭裁判所の許可が必要になります。

成年被後見人が施設に入所する際は、施設を探したり、入所に伴う手続をしたり、転居にともなう各種手続きが目白押しです。
また、不動産の売却では多くの場合、不動産仲介業者がいますで、家庭裁判所の許可が必要なことは仲介業者から指摘してもらうことができますが、賃貸借契約の解除の場合は、第三者から指摘をもらえる機会は少ないです。

しかし「売却」のところで書いたように、家庭裁判所の許可を得ずにした賃貸借契約の解除は無効です。場合によっては、元の契約に戻したり、それが出来ない場合は、損害の補償などの話にもなりかねません。

成年被後見人が契約している自宅アパートの契約解除には、家庭裁判所の許可が必要ですので、十分留意してください。

居住用ではない不動産の処分は?

ここまで「居住用不動産」についてみてきましたが、では居住用ではない不動産の処分はどうでしょうか。
居住用ではない場合、家庭裁判所の許可は不要です。
しかし、一般的に不動産は重要財産とされています。
したがって、居住用ではない不動産であったも、処分をする前には、家庭裁判所と協議をすることをお勧めします。

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